12.虐められる。だれが?
校舎裏にて、俺は数人の女子パイセンに囲まれている。
「あのー、お一人ずつお名前とクラスを教えていただけませんか?」
「うるせぇ! 立場分かってんのか?↑」
5人の女子に囲まれ、2人の女子が遠巻きで俺を見ている。なんて名前のハーレムなんでしょうか?
「目立ちすぎなんだよー、テメェ!」
「1年のクセして生意気なんだよ」
凄まれますが、可愛い女の子なんで、可愛い声なんでェー、全然怖くないです。背も俺より低いし。
「そこのお二人も、突っ立って見てないで、こっち来られたら?」
遠巻きにしている女の子にも声をかける。あの2人は特に美人だ。おっぱいもおっきいし。
俺の手の届く位置にいるお姉様も捨てがたいが、あの2人はもっと捨てがたい。
なんとかして、あのお二方とお友達になれないだろうか?
「何ヘラヘラしてんだよ!」
「立場分かってんのか?↑」
トントンと肩をこづかれる。
「何考えてんだおめーよぉ?」
女の子の小さくて華奢な手で触れていただいて、今日はこれで良いかなー、なんて考えてました。すみません。
「オラ、その可愛いお顔に傷ついちゃマズイだろ?」
「立場分かってんのか?↑」
肩に腕を回されて、ほっぺたペチペチされてます。ちょっと痛いけど、なんか、こういうのもアリかなと思ってましたすみません。
「ちょいと恥ずかしい目に合ってもらうか?」
可愛いお手々が俺の胸元にかかりました。これと「恥ずかしい目」から想像されることは……え? 期待して良いの? 揉まれるの? ウホ!
「……ってさッ!」
ビリッ!
夏物のセーラー服が裂けたーっ! 胸元ぉーッ!
これ、ノリ子さんに買ってもらった物で、俺が金出したんじゃないんだぞ!
「ダーッ!」
頭にきた! 身体がカッとなって、足が出た。
手を出してきた子の足を刈り、腕をとって投げ飛ばす! ……と見せかけて、クリッと身体をスピン回転させて着地。スカートが花開いた。
バランスを崩していたので、倒れないように手は握ったまま。こう見えて俺はフェミニストですから。
「先に……手を出したのは、あ な た が た の ほ う だ ね ? ね?」
腰を落とし、アクションに備える。嗜虐の炎が燃え上がる。……今日はこれでヤろう。
掴んでいた子の背中をトンと押しやり、構えをとる。こう見えて、ノリ子さんからなんちゃって合気道を学んでいたんだ。構えは打突系だけど。
相手はなんの力も持ってない女の子。7人がかりでも、簡単にねじ伏せて返り討ちにしてやる。
ねじ伏せてからの……どさくさでオッパイ触れるよね? お股も……ゲヘ!
俄然、やる気が出てきた。欲望、もとい、闘志に火が着いた!
いやらしい妄想に自然と笑みがこぼれる。いかんいかんと涎を拳で拭う。
ぴゃ? 遠巻きにしていた女の子が後ろを見せて去っていくぞ。
それを見た女の子達が、俺から離れていく。
「生意気なんだよ!」
「ふざけんじゃないよ!」
「立場分かってんのか?↑」
とか言いながら、離れていく。
結局、何処かへ行ってしまった。……逃げたな?
破れたの胸元だし……。体操服でも羽織るか。
この状況……逆に有利に使えないか?
3年生の階をウロウロしていたら、遠巻きにして見ていた美女2人を見つけることが出来た。
近くの男子生徒を捕まえて、物理的に腕を捕まえ、上目遣いであの2人の名前を聞き出した。
美人で有名だからか、すぐ答えてくれた。美人の方が川村さんで、もっと美人の方が島田さんって名前だそうだ。
快く協力してくれた先輩男子生徒は純情そうな上擦った声で答えてくれたから、嘘はないと思う。
放課後、川村さんと島田さんは、ハンバーガー屋さんに寄ってくっちゃべっていた。
店先で別れた2人は、それぞれの家に帰っていく。
その一人、もっと美人の島田パイセンが玄関に入ろうとしたその時。
「パイセンの自宅、ここっすか?」
「え?」
島田パイセンが驚いて振り返る。いつの間にか、すぐ側にジャージの上を着た美少女がいる。
俺だ!
後を付けてきた! どっちか悩んだけど、より美人の方を優先した。
「な、なによ!」
「へー、島田パイセンの家はここでしたか。なかなかご立派なお家で。住抜林業ですか? パシャー!」
洒落た表札と家の全景を写真に撮っておいた。
俺は将来建築家志望なので、立派な家に興味があるんだ。
「何するのよ! 消しなさい!」
おっと! ヒョイと避ける。なぜか殴りかかってきたよ!
お嬢様パンチなので、簡単に手首を掴めた。力が弱いねー。俺が強く握ると、ピクリとも動かせないでいる。
「何をするのか? それはこちらの台詞ですよ、お嬢様。それと悲鳴上げてもダメですよ。私も女の子だし、年下だし」
もう片方の手で島田パイセンの顎を掴む。顔を近づけ、頭突き!
――をしようと思ったっけど、直前で止めた。だって、めっちゃ美人なんだもん。良い匂いがするんだもん。俺は平和主義者なんだもん。可愛そうだもん。
「一言ご命じくだされば、靴の一つや二つ、舐めてご覧に入れましょうに……」
お舐めなさい、と言われれば喜んで靴を舐めますよ、上目遣いで。爪先から見上げればおパンツ丸見えでしょうから。
ポイと手を離し、お家を見上げる。
「それにしても良いお家にお住まいだ」
洗濯物干しが二階のベランダにある。
「何をする気よ!?」
「別に」
見上げた先に、女子の下着っぽいのが乾されていたのだ。パイセンのかな? って想像しながら見上げただけ。
「では先輩。これからも贔屓にしてやってくださいね」
バイバイって手を振ってお別れした。仲良くなれると良いな。
「え? なにそれ? イジメ? イジメなの? すぐに殴り返さなきゃ調子に乗られるわよ!」
破れた制服を見せたらこうなった。ノリ子さんは俺以上に武闘派だった。
「アレって、イジメだったのか? イジメってもっと陰湿なんだと思ってた」
島で二人きりで育った俺は「イジメ」にピンと来ていない。
沢山の女の子に囲まれて嬉しかった。だって、皆様3年生だよ。15歳ともなれば準高校生。年上のおんなの人じゃないか。
お体のラインなんかもより曲線がエロくて、お胸も柔らかそうに膨らんでおられる。そっちの情報が多すぎてなんも頭に入ってこなかった。
そかも、島田先輩の手首が細ッ! 華奢ッ! 華奢で括れてて張ってる!
もう一回、囲んでくれないかな?
今夜は遅くまで起きていた。
で、翌日。
もう一人の、美人さんの先輩、川村さんの後をこれ見よがしにつけていった。
後ろを振り返られる度、にっこり笑って手を振った。困ってる顔も可愛いゲヘ。
お家どこかなー?
個人情報がうるさくなければ、住所なんか簡単に分かるし、こんな面倒なことしなくてもいいのに。ほんと、くたばれよ個人情報!
川村という名前は判明している。違う家に入っても、嘘だと分かる。
なかなか自宅へ帰ってくれないので、気を利かせて姿を隠した。角に隠れて手鏡で美人先輩の動向を監視する。……この手鏡は俺が自分の顔を見るために常備してある一品だ。アルミの四角いのでマングムって裏にかいていある。
川村さんは、すげー用心しながら、とある閑静な住宅街へと入っていき、一軒の家に入っていった。
「川村」の表札があがっていた。住所まで表記されていた。素晴らしきかな個人情報。
写真撮ってから、チャイムを押した。
3回目でインターホンに反応があった。お母さんの声っぽい。
「どちら?」
「同じ中学の後輩です。いま入っていくところを偶然見かけまして。お姉様はご在宅ですか?」
しばし沈黙。
「会いたくないと言ってます。お引き取りください」
「わかりまし――」
ブツン!
インターホンが切られた。
失礼なお母さんだなー。
さらに翌日の朝一番。
だいぶスキンシップが取れたと判断して、直接、美女お二人の教室へ乗り込んだ。
「ああいうまどろっこしいことをなさらなくとも、直接声をかけていただければ、こうしてこちらから参りましたのに」
首をすくめて小さくなってる2人を前に、どかっと音を立てて腰を下ろす俺。
「気に障ることがあれば、遠慮なく申し出てくださいよ、お姉様。そうそう、お姉様方、お近づきの印に何かおごらせてくださいよ。放課後待ってますから、2人きりで来てくださいね」
翠のプレゼントで持ち金全部使いってしまい、金欠状態なのですが、ノリ子さんが資金を提供してくれた。こういう面白いことが大好きな女性である。
とはいえ、彼女らのお友達の分まで持ってない。本来ならハーレムなのだが、断腸の思いで2人だけのお誘いとした。
これは、いわばノリ子さん公認のナンパ。
食事に誘うトコロまでトントン拍子に進んできた。
女の子だから簡単に事が運ぶんだ、きっと。女の子に産まれて良かった!
それでは、と言うことで席を立った。
「そうそう!」
思いだしたように振り返る。
「いつかお姉様方のお友達の方々も紹介してくださいよ。それでは」
王子様を心がけて、頭を下げておいた。こういう事は最初の印象が大事だからね。あわよくば、お友達のお姉様とも親密な間柄になりたい。下心だけは満載しております。




