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2.カウンセリング

本日、2回目の投稿です


「では始めましょうか。はい、碧ちゃん、目を瞑って、両手は胸に、気を楽ぅーにしてぇー」

「楽ぅー……」

 ノリ子さん(とおじさんの)寝室にて。俺はベッドに横たわっている。

 ノリ子さんによるカウンセリングだ。ノリ子さん、ものすごく勉強して、なんか、ちょうどいい具合の資格を取ったそうだ。

「では、碧ちゃんの現状をお話ししてちょうだい。いつものように、順序はバラバラでいいのよ」

「はい」

 ということで、俺は話しを始めた。

「まず、自分の体と心についてですが……」

 

 俺は話した。

 俺の心と魂は野郎である。

 俺の体は美少女である、その事を認識して受け入れている。

「あ、その前にノリ子さん。ノリ子さんから見た俺の見た目って、どんなんですか?」

「そうねー……」

 俺が自分の姿を見て思うことは一つ。それが他人の目でどう映っているのか、差違を知りたい。

「美少女ね。写真を送れば、大手タレント事務所でも即採用されるでしょうね。あと2.3年もすれば羨ましいくらいの美人になるわ。……いやちょっと、マジで? 連休からこっちにきて、急に美少女度が上がってない?」

「どうかな。でもノリ子さんの目から見ても、俺のガワは美少女に見えるのか、ふーん」

 自分の中をのぞき見る。

「それが良いのか悪いのか? 一部の俺は、喜ばしいことだと言っている。一方、もう一部分の俺は、目立つのは良くないと言ってる……」


 話を続けよう。これは伏線と捕らえてもらいたい。

 何度も言うが、俺は男だ。これは変わらない。

 その、男がこう言う。「美少女でラッキー!」、と。

 その美少女を俺は自由にできる。女子の服で着飾ることはもちろん、格好いい男のファッションに身を包むこともできる。どちらもたいへん美しくなるだろう。

 着飾ることができるなら、着飾らぬこともできる。

 ドレス姿はもちろん、下着姿どころか、すっぽぽーん! にもできる。

 そして、それを男の俺がいろんな意味で鑑賞している。鑑賞する。鑑賞できる。

 俺は、アオイという美少女が好きだ。性的な意味で好んでいる。嗜んでもいる。

 ここが碧とアオイなところ。俺は俺で美少女の肉体を持つが、その肉体を持つ美少女は真の俺じゃない。

 だから、美少女アオイを平気でナオの前に晒すことができる。


 と、いいつつ……めんどくさい点は……肉体から受ける刺激を俺が受け取っているということ。

 なんだそれ? となるだろうが、聞いてほしい。

 美少女アオイが蹂躙されると、俺がその被害を全部被ると言うこと。加えて、俺は男とのナニは魂のレベルで忌避拒絶している。

 ここから導き出されることは、美少女のえっちぃな姿をさらしても何とも思わないが、えっちぃな被害を受けると修復不可能な障害を心が受けると言うことだ。

 例えで言うと……暴力物動画はイケるが、実地は生理的にダメ。

 お解りいただけただろうか?

 

「あー……」

 ノリ子さんの目が半眼になっている。そこは医者としてポーカーフェイスを作ろうよ!

「あと、女装してるみたいで、そっち方面で恥ずかしいと言ってる俺も一人いる」

 セーラー服は慣れた。でもスカートは恥ずかしい。でも私服のミニは恥ずかしくない。


「心と体の乖離ね。多重人格の気がある……」

「やっぱ病気ですか」

「碧ちゃんのケースは――。碧ちゃん、連休からこっち、毎朝ゴハン前にランニングしてるでしょう?」

「はい。10キロばかり」

「それは体のためかしら?」

「島で暮らしていたときに比べ、体つきが変わったし、体重も増えて体がなまってまして。連続バク転が10回出来なくなった。このままではデブチョイ子になってしまうという危機感からです。あと、健康でいたいのと、ゴハンいっぱい食べたいとの願いを込めて」


 ノリ子さんはにっこり笑いながら首を左右に振った。

「言い直すわ。それは、体をいたわっての事かしら? それとも、女の子であるアオイちゃんのボディラインとか、体型だとか、肉体デザインを気にしてのことなのかしら?」

「それは……」

 即答できなかった。

 ちょっと考える。

「綺麗なデザインでいたいという思いからかな? うーん、きっとそうだ。でも健康も考えてますよ」

 アオイという美少女を健康的に美しくしてあげたい。その気もある。


「それは、男の子……じゃなくて、異性からモテたいためかしら?」

「それは……」

 また即答できなかった。

 またちょっと考える。

「女からも男からも……それもある。それを面白がってる俺がいる。で、もう一つ理由があって。それは自分が楽しむためです。この自分というのは男の碧なんですが……」


 ノリ子さんは、目と目の間をグリグリと揉んでいる。


「質問を変えます。碧ちゃんは、いろんな薬や手術なんかで男の体になれるとすれば、男になりますか?」

「なりません」

 これは即答だ。

「だれが、気色悪い物ぶら下げている男の体なんかに……あれ? これ、前に俺が言ってた事と矛盾するよね? なんで?」

 女性だと発覚した当時は、元の体に戻せ! 男の体に戻せ! と意味の分からないことを口走って泣きじゃくっていた。

 それが今はどうだ? 俺の口が、女の体で良いと言っている。


「うーん、結局、この身体……女の子の身体は他人なのかな? サイボーグみたいな? ……これはちょっと言いすぎだった。でもね、精神が乖離してるから女をやっていけるんだと思ってるんだ」

「肉体と精神が乖離して多重人格化している。でも上手い塩梅に融合して、状況に順応している。めんどくさい症例ね……将来はどうかしら? どちらの性で社会人を迎えていると思う?」

「うーん……」

 ここで……なんか、記憶の片隅に、何処かに消えてしまった記憶の尻尾みたいなのが……だめだ、掴み損ねた、逃げられた。


 気持を切り替えて、真面目に考えよう。

「中身は男、身体は女。女として上手く世間を騙くらかして生活しているような気がする。タイトスカートはいてOLやってそうな気がする。でもって、お母さんと翠と3人で一緒に住んでる?」

 またなんかこう……ふわっとした……いつか見た夢のような?

「一時のことを思えばかなり安定したようね。このまま精神の安定が続けば何も問題はないけど。……問題だけど。一言いわせてもらって良いかしら?」

「なんです?」

 何か怖い。

「碧ちゃん、あなたのスケベ心が身を助けている。それだけよ」

「え? なんですかそれ?」

「はい、カウンセリング終了! 次回は1月後」

「ちょ、ノリ子さん! ちょっと!」

 ノリ子さんは照明を戻した後、すたこらと部屋を出て行った。

 

 

「……と言うことなんだけど。なあナオ、俺って、そんなに酷いスケベか?」

 ノリ子さんのカウンセリングの後、俺はナオの部屋へ来ていた。


「スケベを数値化すると、俺と同じレベルのスケベになる」

 ナオと同じかー。これはかなり数値の高いスケベだ。

「アオイはさ、その身体がスケベな意味で好きなんだ。何んら難しいことはない」

 合ってる!?

「簡単に言われてしまった」

 俺が悩んでウンウン言ってた時間は、何だったんだ?


「それにさー……相談を僕に持ちかけてくれて、……頼りにしてくれて嬉しいんだけど、……もう一人、増やしたんじゃないのかい? 相談相手」

  

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