GOGOGO!(大脱出)
keiさんは夕食の時に起きてきたものの、食べ終わると...またぐっすりと眠ってしまいました。
よほど疲れている様子で、食べている時もボーっとしていました。
さっきの事はなかったかのように、キョトンとして元気がありません。
ぐったりとした様子で、何も話してくれません。
あの事を聞いてみたかったけれど、聞いてよいものかわからず黙っていました。
あの時感じた殺気は、もう微塵もありません。
解離性人格障害!
keiさんの中に、もう一つの人格!?
あの時のkeiさんの目を思い出すと、戸惑いと不安を感じます。
もしあの人格が暴走したら!なんて、怖い想像をしてしまいます。
でも、あんなに殺気に満ちていたのに、相手の人を殺すこともなく冷静さを失っていませんでした。
暴走なんて、余計な心配ですね。そうあってほしいです。
逆に考えれば強い味方を得たことにもなります。
「イリーさん、イリーさん。」
ええっ!
「イリーさん、さめです。」
さめくんが袋をひきずりながらこちらにやってきます。
「さめくんも無事だったのね。」
「ずっと、keiさんのウエストバックの中に隠れていました。」
さめくんは檻の中に入ってくると、引きずってきた袋を開け始めます。
「スマホとお財布、とりあえず必要なもの持ってきました。とにかく急いで脱出しましょう!」
「逃げ出すとかえって、あの人達を刺激するような気もするけれど,,,」
逆上されて手荒なことをされる心配もあります。
「でも、お父さんのこともありますし。急いで行動した方が良いのでは!」
先々を心配して策を練るより、さめくんの言う通り行動かしら。
「そうね、急がないといけないわね。」
父に早く健康になってもらわないといけません。
国王不在に乗じて、こういう人たちも何を始めるか分かりません。
「牢屋番の人と見張り台の人には、しばらく眠ってもらっています。逃げるなら今のうちです。」
「 keiさんおきれるかしら?そう言えばさっき、keiさんに不思議なことが起きたの。」
さめくんはkeiさんの耳元で、起きて起きてとkeiさんに囁いてます。
あの事をさめくんに話していいのかしら、でもさめくんにしか話せないし…。
「keiさんはまるで人が変わったようになって、普段のkeiさんからは想像も出来できないほど殺気に満ちていて、私怖くて...」
「keiさんの身に何かあったんですね。謙信さんが助けに来てくれたんです。この話は後で、今は逃げることを優先しましょう。」
謙信さん?謙信さんといえば上杉?
「イリアさんも起こしてもらえませんか?ぜんぜん目を覚ます様子がないんですけど。」
さめ君は困った様子です。
keiさんの体を大きくゆすると、やっともぞもぞと動き始めました。
「さて、脱出しましょう!」
さめくんが意気込んでsます。
「keiさん、ここから逃げますよ。目を覚まして!」
どのようにして牢番や見張りを眠らせたのか?
なんとか、外へ逃げ出せました。
盗賊たちは寝静まり替えてっています。
「keiさん、何をしてたんですか!」
さめったら、うるさい!
「だって、お腹が空いてたんだもん。」
「食堂によって、残り物をつまみ食いしてんでしょ!見つかったらどうするんですか!」
ほんと、さめってば小言ばっかり。
「わかったから、早く行こー!」
「さめ君も喧嘩をしてないで早く行きましょう。」
へ~ん、さめてばイリーに怒られてんるのw
「喧嘩じゃありません。keiさんを叱っているんです!」
keiたちは反政府軍のすきをついて、建物の外に出てきましたよ。
弾薬庫と倉庫の間に隠れてるんでっす。
トラックを奪って逃げる予定だったんだけど...。
鍵がかかってます(-_-;)
「wifiのパスワードが壁に貼られている不用心さなのに、トラックの鍵はちゃんとかけてありますね。」
さめは困り顔です。
そうそうkeiはですねぇ。wifiのパスワードが壁に貼ってあるのを見つけちゃったんですw
「走って逃げるといっても、砂漠の真ん中だし、私たちのラバはどこにいるのかしら?」
二人ともお困りの様子。
「ねぇねぇ、倉庫の中にイイものがあるよ。」
「keiさん!イイものより、まずはラバたちを探しましょう。」
keiはラバ君よりジープのほうが良いと思うんですが...。
「ここに連れられてきたとき、keiさんはラクダ、イリーさんはラバでしたね。」
「そう、だからきっとどこかにラバがいると思うわ。」
二人は、ラバにご執心です。イリーはラバ好きだからなぁ~。
そうだった、ラバ君たちをおいていけません!一緒に逃げないとかわいそうだよね。
「いったん、ラバでこの場所を離れれば、砂漠の中で私たちを見つけるのはむつかしいはずです。」
「ラバだし、馬小屋とかラクダ小屋みたいなところにいるんじゃない。」
と言ってはみたもののね、辺りにそれらしき建物はありません。
「兵士は総勢で30人くらいだと思うんだけど、あの宿舎は大きすぎないかしら?」
イリーが兵舎を観察してますよ。
「間仕切りされて、馬屋が一緒になっているかもしれませんね。」
え~、ラバ君たちを探しに兵舎いくの~?
「動物と兵舎を、一緒にしないんじゃんない。くさいもん。」
もう中腰で隠れて歩くの嫌なのね~keiは腰が痛くなってます!
「じゃあ、keiさんはここで待っていて、さめ君と私で探してくるから。」
ひとりで待っているのも、心細いしなぁ~(・・;)
「ねぇ~とりあえず、そこのジープに乗って逃げて、ラバ君たちはあとで助けに来たら!」
「ジープ!?」
あらっ、二人とも目が真ん丸になっています。
「ジープって、どこにあるんですか?」
「だから、倉庫にあるよ!」
二人で倉庫の中を覗き込んで沈黙してます。
「早く言ってください!」
「イイものがあるよ!って言ったじゃん!」
さめったら人の話をちゃんと聞いてなかったくせにぃ~。
「でも、このジープにも鍵かかけてあるんじゃないかしら?」
「古い戦争中のジープだから、鍵なんてないんじゃない、きっと!」
でもね、やっぱり鍵がついてたんです。
古いジープだけど、きれいに整備されて普通に使ってるみたいです。
普段使いの車に、やっぱ鍵はついてますね。
「残念ね。やっぱりラバさんたちと一緒に逃げましょう。」
keiも仕方がないと思った。
「倉庫の中で人目に付きませんし、なんとかばらして鍵を壊...ん!」
さめが鍵を観察しています。ハンドルロックがついてると思お。
「keiさん!」
鍵の構造を調べていたさめが小声をあげたよ。
「なに?」
「鍵、ついてるじゃないですか!」
「ついてるよ。」
だから困っているのに、やっぱりさめはさめです(-_-;)
「ついてるよ。じゃなくて、鍵がついてるじゃないですか!」
怒り怒り始めました!
「これを回せばいいんですよね。keiさん、よく見てください!」
どくろのアクセサリーがついているけど、これって鍵!?
「あっ、ついてる。」
「これを回せば、ジープは動くんですよね!」
さめは鍵の周りを調べていますよ。回せば動くって自分で言っていたくせに、何を調べてるんだか?
「keiさん、この鍵はハンドルロックされているだけで、電気系の配線がされていません?」
「ジープだから、クランクシャフトで回せばエンジンがかかるよ。やってみる!」
さめがひれをあげています。まった!のサイン。
「もしも、かかったらエンジン音で寝てもらってる見張りの人にばれてしまいますよ。まずは出口を確保しましょう!」
いよいよ、大脱出だね!
砂漠の逃亡(^o^)v
keiたちを待ち受けるものは一体?
それとも追っ手に捉えられてしまうのでしょうか!
「シャッターあけたよ!ガソリンは入ってる?」
「ここにもありますから、持っていきましょう。」
たぶん、クランクシャフトは運転席の横か、バンパーについてるはず。
あった!
「イリー、運転席について!声を掛けたらアクセルペダルを、ポンって、イリー?」
「keiさんはこういうことはホント得意ですね。ところでイリーさんはどこに行ったんでしょう?」
あっ走ってきた!
おトイレだったかな?
「待ったー?」
イリーが運転席に乗るようにさめが催促しています。
「イリー、声を掛けたらアクセルペダルを、ポンってちょっとだけ踏んで。さっそく出かけるよ!」
ぐるっぐるっぐ~るっ←くらんぷしゃふと
「keiさん、私が回しましょうか?」
「だいじょび!がんばる!」
ぐるぐるっぶろん!かたかたかたかた~
「エンジンかかったね。交代して!」
なんかワクワクする~
たぁ~たたたぁ~ん
たったぁ~ん
たらぁたぁたらぁらったぁ~
つっとぅ~う~
「今度はなんの音楽ですか?」
「たぶん、keiさんお気に入りの海外ドラマ特攻野郎Aチームだと思います。」
「ゲストハウスにコンプリートボックスがあるから、またアルバイトに来てくれたら見せてあげるね。」
クラッチを踏んで、ギアを入れて、そっとアクセルを踏んで、クラッチをはなしてく。
「動いた!じゃなくて"走った"だった!」
「何をぶつぶつ言ってるんですか?」
さめはkeiのマントの肩のあたりにくるまって、まっすぐ前を見たまま質問してきたよ。
なんか、運転しているkeiよりも真剣そう(・・;)
「昔、初めて教習所で車を動かしたときに、嫌味な自動車の教官に言われた。」
「そんなことをまだ覚えてるんですか?」
大したことじゃなんだけどね、覚えてる。
「まぁいいや。GO!GO!GO!」
でも今はゆっくり、そっとそっとでした。
さめもひれを下にひらひらさせて、交通整理のガードマンの人がするように徐行の合図をしてます。
ゆっくりと外に出たよ。
「keiさん、まだですよ。そっとそっと!ライトもつけないで。」
見張塔の人も起きてない様子です。
「イリーずるい、keiもおトイレして来ればよかった。」
少し緊張が解けたら、keiもおトイレ行きたくなってきた。
「トイレじゃないの、トラックのタイヤをパンクさせてきました。」
え~!
「映画でよくやってるじゃないですか?」
うん(・_・;)