星見る男
ベランダから星が見える。星がある、ということに、なぜかひどく安心した。
履いていたサンダルを脱ぎ、ベランダから部屋に入る。そレから、窓を閉めると、私はため息をついた。
テレビの電源をつけた。だが、その音をうるさく感じたので、すぐに切った。
本棚からいくつか本を取り、ソファに座って、ペラペラとめくった。読んだ先から忘れていった。文字を追うことがこんなに苦痛だとは、本を買った時の私は思わなかっただろう。
冷蔵庫からハムを取り出し、食べてみた。細かくなったハムが、口の中のあちこちに散らばった。それを牛乳で流し込んだ。ハムを食べても、牛乳を飲んでも、私の思考は動かなかった。空っぽだった。
私はもう一度、星を見ようかと思ったが、もう四回も見たのだからよしたほうがいいだろうと思い、浴室へ向かった。