side:ステイン2
彼女も結局は女性だ、不満があったのだろう。
はぁ。めんどくさいな。
…そこが彼女は他の女性とは違って唯一手のかからず楽なところであったのにがっかりだ。
謝罪や訪問したい旨の手紙を送ったが、返ってくる手紙は明らかにメイドが代筆したものだ。
しかも内容も任されているのだろうな、YESもNOもない。ただの手紙へのお礼だ。
さすがにやりすぎじゃないか。
そう思い私は手紙に訪問したい旨は伝えてあるのをいいことにまたマカロフ侯爵家に足を運んだ。
ロビーに案内されたが、無理にメイドの後ろについてアナティナの部屋の前まで行った。
そこから聞こえてきた彼女の明るく嫌味をたっぷり含んだ声を聞いて驚いた。
これがあの大人しく感情の無いアナティナなのか。
私も負けじと大変忙しいところ悪いねと言いつつ挨拶した。アナティナは一瞬目を見開いたが本性がバレたと思ってか、飾らない態度と口調を続けた。
婚約破棄をしたいと言い出した時のアナティナの顔が頭から離れない。
短くなった燃えるような赤髪を揺らし、意志の強い黄金の瞳をしっかりこちらに向けるその姿は太陽の化身と見間違うほど美しかった。
…きれいだ。
私のものだ。
誰にもやるものか。
気づけば、そう思いその部屋を後にしていた。
今まで共にしてきたアナティナは何だったのだろうか。長い髪を1つ後ろにまとめただ微笑んでいたアナティナはどこにもいなかった。
そこにはただメイドと気さくに笑みを浮かべ話し、意志の強い瞳でキラキラ輝かせながら自分のやりたいことを話すとても綺麗な赤髪の少女しかいなかった。
くるくる変わる表情もとても愛くるしく感じる。
あと恋愛したいってなんだ。そんなもの私とだって…私とすればいいだろっ。
なんだ、この昂る気持ちは。
離れたばかりなのにもう彼女の真の通った声を聞きたい、顔を見たいと思うなんて初めてだ。
私は一体どうしたっていうんだ。
とりあえず、学園生活が勝負どころだな。彼女にまず私に関心を持ってもらうところから始めよう。今の俺は彼女にとって”邪魔なもの”…らしいからな。