対面
貴族の女性はたいてい微笑みを浮かべている。
いわば仮面だ。
私もそうだった。
殿下が何を言おうと否定することなく微笑みを浮かべて、YESマンだった。
自己主張せず、男性を立たせる。
ほんとバカみたい。
私はもう嫌なことは嫌だと言うし、男性の引き立たせるためのアクセサリーなんかにならない。
やりたいことだっていっぱいあるんだから。
殿下の訪問を拒否してから3日連続で手紙が届く。
正直書く気にならないからファルに返事を任せてる。
形式上にしてはしつこい。
「お、お嬢様。あの、殿下がお話があるとのことでいらっしゃってます」
なにそれ。
学習能力ないわけ?
前もって知らせろってば。
「お嬢様は今大変お忙しいみたい。殿下には申し訳ないけど帰ってもらって」
にっこりと笑顔でファルに伝える。
「いや、あの…」
「久しぶりだね。大変お忙しいところお邪魔しちゃったかな」
おっふ。
いらっしゃってるって部屋の前に、なのね。
ロビーとかじゃなくファルの後ろにいたんだ。
ドアの影に隠れてたとか性格悪いわね。
「ようこそおいで下さいました、帝国の第二の太陽」
「ははっ、どうしたんだい?いやに他人行儀な挨拶だね」
うるさいわね、とっとと用事済ませて帰ってよね。
長居はさせないわよ。
「…お話とは?」
「久しぶりに会うんだお茶でも話しながら話そうか」
「ファル。殿下は喉が乾いてるみたいなの。お水の用意をお願い。私の分は結構よ。」
ファルが私の命令にかしこまるべきかあわあわしてる。
ごめんなさいね、でも私のせいじゃないと思うの。