プロローグ
「私はやってません」
「はっ、これだけ証拠が揃っていながらまだ言うのか。いいかげん認めたらどうだ?」
「ステイン様ぁ〜、私怖かったです。毎日毎日いじめられて…でもぉ、ただ謝ってくれたら私はそれでいいんですぅ」
「ルビー…なんて慈悲深いんだ。おいっ、ルビーがこう言ってくれているんだ、謝ったらどうだ。それとも侯爵令嬢ともなると頭を下げることすら嫌なのか」
私は6歳でステイン様の婚約者となった。
それから時間を共にしてきたと言うのに、私の言葉に耳を傾けてくれない。
あんなに優しく接してくれていたのに。
なぜ?
私はこんなにも貴方のために、国のためにと努力してきたのに。
貴方だけは信じて欲しかった、周りが何を言ったとしても。
「…もう一度言います。私は何もやっておりません。ステイン様落ち着いて私の話をー」
「もういいっ!こいつを牢に入れておけっ」
「っ!ステイン様!」
両腕を掴まれ無理やり連行される。
誰も話を聞いてくれないまま、乱暴に牢に押し込まれる。
冷たい石の牢。
バケツが1つ、トイレ用なのだろうか。
普通侯爵令嬢である私が学校で男爵令嬢にいじめを行なっていたとしてまもこの仕打ちは酷すぎる。
つまり、周りも私が彼女にいじめをしたと信じて疑わないからだ。
牢に入れられてから2週間ほど経ったのだろう。
喉が乾いてカスカスで声すら出ない。
体も衰えているのがわかる。
力が入らず、床に横たわっているのがその証拠だ。
笑えてくる。
私の人生はなんだったんだろう。
ステイン様の笑顔が好きだった。
例えそこには愛情は無くとも、将来一緒に国を背負うパートナーとして大切にしてくれていた。
にもかかわらず彼は私では無く、ただ可愛らしいだけが取り柄の男爵令嬢ルビー・ブリチウィンを選んだ。
恋愛はここまで人を変えるものだろうか。
私も1度くらい恋をしたかった…な
私は暗い牢の中で意識を手放した。