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『全力ファイティング』3


「今日集まってもらったのは、1年生以外の子はわかると思うけど『スノーファイト・フェスタ』についてのことなんだ」


寮の大広間。

 クリフ副寮長の言葉に大半の生徒が熱意のこもった目で頷く中、1年生達は首を縮こませた。

思った以上にみんな本気で、なんか怖そう。


「とりま『スノーファイト・フェスタ』……『スノフェス』について説明するよん」


軽い口調だが、目が座っているように見える。

 寮長がその横で座って黙っているだけなのが余計に怖い。


「このお祭りは寮対抗。どの学園でもある『雪祭り』をBNA風にアレンジしたバトルイベント!

 勝った寮には冬季期間の雪かき免除、さらに飛行術の単位が8以上確定になる」


……なんだって?

 運動が苦手の俺とイルゼは、思わず同時に顔を上げる。


「ルールはシンプル。雪玉を相手の寮にぶつけ、前身と後身にあるゼッケンを汚したら勝ち。汚されたら負け。範囲は寮と食堂、購買以外の学園内全域。

 ざっくり言えば殺伐雪合戦だよ!」


殺伐雪合戦……。


「ふむ、それは分かったよ。しかしなぜ今から集まりを開く必要があるのかい?」

「良い質問! さっきも言った通り、優勝の報酬はなかなかのものでしょ? チーム戦だから毎年早めに集まって作戦を練っておくようにしてるんだ」


ちなみに去年の優勝はタンザナイト寮。

 意外にも、この寮は3連覇を達成しているらしい。


「雪合戦って言うけど、そんなに積もるの?」

「はい、この学園は首都より結構北側にありますから。万一降らなくてもおじさまなら何とかするんでしょう」


うわあ、寒そう。

 まだ雪は降ってないけど、例年通りなら1月末になると積もるらしい。


「この学園の生徒、結構チームワーク不足しがちでさ〜。こうでもしないと協力プレイがままならないんだよねぇ」

「そうなんですか……?」


そうは見えませんけど。


「別に協力する気が無いわけじゃないけど、我が強いっていうの? やりたいことがバラけがちらしいよ。

……って、そんな話はまた今度!

 とりあえず今日は解散、次に招集する時までに作戦の案考えてみてね!」



んじゃ、バイバーイ!と副寮長が明るく言えば、途端にみんな各々動き出していつものざわめきが戻ったのであった。


「作戦か……思いつかないなあ」

「うむ、僕は馬鹿だから殴れば……いや、投げれば済む話としか思えないよ!」

「極端だね」


ってか、ジミィやエルザ嬢達に作戦のことバレちゃダメなのキツくないか?

 友達の中で敵味方分かれちゃうのってあんまり嬉しくないんだが。



「イルゼはどう? 4年前から住んでるなら、良い感じに使えそうな場所とかない?」

「そうですねぇ……でも、私は本校舎より『裏校舎』の方が庭って感じがしますからぁ」


流石に『裏校舎』は使えないか、ズルいし。

 どうせ『裏校舎』のことを知ってるのは、まだ学園長と俺達4人だけだし……。


「あっ」

「?」


俺達4人だけ。でも今回は全員が仲間なわけじゃない。


「ジミィが『裏校舎』使ってくる可能性もあるんじゃ」

「ヒェッ」


やりかねない、とばかりにイルゼが悲鳴をあげる。ヒロも、「確かに」と納得したような顔をした。

 今回お金が絡んでいるわけではないが、相手の寮長は毎度お馴染みレーオンハルト殿下。今年卒業しなければならないのもあるし、何より負けるのは好きじゃなさそうだから確実に勝とうとしてくるはず。

 姑息な手も使ってきそうだし、またそういうのが得意なジミィを買収して暗躍させそうだ。


「……でもアンバー寮が危ういとはいえ、他の寮…特にガーネット寮とオパール寮について全然知らないんだよね。先輩方に対策をお任せするしかないのかなぁ」


チェスとかの戦略系のゲームをやっている気分で呟くと、ヒロはにこやかに言った。


「なんだか楽しそうだね、ウィル!」

「確かにそうですねぇ、随分ノリノリで……楽しそうなお顔が拝めて私も嬉しいですっ」

「そ、そうかな」


知らぬ間にはしゃいでいたことにようやく羞恥心を持ち、赤らめた頬をかく。

 チームとか組むのがそもそも初めてだし、戦いと言われると燃えるタチなのかもしれない。それに。


「負けたら悔しいしね」


意識して『悔しい』と言ったのは初めて、かもしれない。

 複雑な気持ちから言ったことに2人は気づくはずもなく、笑顔で頷いてくれた。



「ああ! 勝って共に勝利の余韻に浸ろう!」

「わ、私も出来るだけ頑張りますよぉ!」


 そして、ヒロが小さく「そしてウィルの知名度を上げよう!」と言うので即座に止めた。




その頃、


「『スノーファイト・フェスタ』ねェ〜〜。毎年サボってたから全然概要覚えてねェわ」

「おい、それでも寮長なんスか」



という論外な事態にアンバー寮が陥っていたのはまた別の話である。

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