もう一人の『僕』
「三年......前に、戻ってる?」
壁にかかった少しお洒落なカレンダーは、三年前の物だった。
見間違えたのかと目を擦るが確かに三年前だった。
三年前は......私の入学したときだっけ......
と想像して気づく。
二条宮 恵理は一年生の時同じクラスにいた女子だ。どこかで聞いたような名前だと思っていたが、まさか元クラスメートだとは思いもしなかった。
いつも皆の輪の中にいて笑顔を振り撒いていた。財閥令嬢だからだろうけど取り巻きもいた。しかし、そのとき既に内気で陰キャだった私は面識がないし、認知すらされていなかっただろう。
私も別世界に住む人だと思って全く無関心だった。
しかし彼女は私の家庭環境が何処からか漏れた時も私に何もしてこなかった数少ない人物だ。
その事は密かに感謝してもいる。
彼女に目をつけられていたら私の自殺はあと一年ほど早かったかもしれないのだ。
それほどに彼女は影響力を持っていた。
こうしてなぜか知らないけど体を貰ったしそこら辺も感謝している。
そこまで考えてまたひとつ気づく。
じゃあ、過去の『僕』は......?
最低でもまだこの時の私は『私』というイレギュラー無しで生きていたはずだ。
このままいけば『僕』も私と同じような目に会ってしまう。
そしてきっと壊れてしまうのだろう。
......いや
あの悪夢は繰り返させてはいけない。
自身が壊れていくのをただ傍観していてはいけない。
『私』は......どうす
ズキリと頭に痛みが走る
そうだ
ーーもしも次に目を覚ますことがあったら自分だけを愛し、慈しむ。ーー
そう誓ったんだ。
『僕』を守らないと。
今の『私』はその為にいる。