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第四話 書記長と元帥、中華の安定と欧州の混乱

1940年 7月1日 ソヴィエト社会主義共和国連邦 モスクワ

「日本人がイギリス人の側に立って参戦したようだな。同志。」

「はい、同志書記長。すでに上海、天津に上陸、占領したほか、北平、南京、ハノイなどにも空爆を仕掛けています。中華民国は内陸に引き込んで抵抗を続ける構えですが、まあそう長くはもたないでしょう。」

「我々も20年前の革命の時にはそのように予想していた干渉軍を打ち破ったが?」

「中華民国側にはなによりも近代的な兵器が不足しています。フランスはインドシナ防衛に手いっぱいですし、そもそもアメリカは現在の中華民国を国として承認しておりません。20年前と現代では兵器の性能は飛躍的に進歩しており…」

「ああ、君にその話をしたのは間違いだったな同志。君こそが赤軍を近代化したのだから、同志トハチェフスキー。」

「はい、同志スターリン。」


スターリンの言葉にトハチェフスキーは満足げに肯いた。よくわかってるじゃないか、とでもいいたげに。書記長たる自分の事を歯牙にもかけない態度。こういうところが嫌いなんだ。とスターリンは思ったが背に腹は代えられなかった。

赤軍を近代的でより精強な軍にする事にかけての適任はこの男しかいないのだから。くわえていえば、政敵のトロツキーの如く夢想的に世界革命などと言い出さない、リアリズムに満ちた職業軍人であるところも気に入っていた。

もっとも、かつて自分に屈辱を与え、失脚寸前にまで追いやった点については全く許す気はなかったが。


「同志、しかしだからこそ我々の価値が出るのではないかね?」

「ああ、先日の中華民国からの援助要請でしたか、最も先手を取るつもりが取られたようですが」

「わがソヴィエトとしては日本帝国主義がこれ以上強大化する事を望まない。あとでポーランド辺りと手を結ばれれば厄介だ。だからこそ中華民国が泣きついてきた今が好機だとは思わんかね。」


ポーランドも日本も絶えずロシアの脅威にさらされていた国だった。ポーランド独立の指導者であるピウスツキが日露戦争中に日本に援助をもとめてきた事もあり、そもそも日本人の対ロシア観の形成の大きな転機となった、はんぺんごろう事件をひきおこしたペニョフスキーからしてポーランド人だった。

現在はたがいに敵陣営にあるが、日本は親英、反中のためにポーランドは反独のために参戦していただけであって別に両国の間でこれといった敵対関係があったわけでも無く、手を取り合う可能性が無いとも言えなかった。


「軍事顧問団派遣と兵器類の供与、そんなところですかな」

「すでに準備は進められている。それからフィンランドの件だがあそこならばポーランド人も手出しはできないだろう。」

「はい、同志書記長。スペインでのブジョンヌイの失態は繰り返しませんよ。」

「期待しているぞ同志。」


1933年の枢軸中華民国の成立後も列強諸国の対中華民国政策は変わる事は無かった。枢軸中華民国もまた近代化のために積極的に各国の資本投下を受け入れていった。

また、瑞金に本拠地を置いて中原大戦の中でに勢力を拡大していた中華ソビエト共和国(中華民国側は単に共匪とよんだ)に対してフランス軍事顧問団の指導の下徹底的な攻撃を仕掛け、これを掃討する事に成功していたことは海外からも高く評価されていた。

枢軸中華民国が成立し、安定した政権となりつつあるころ、そのスポンサーであったフランスでは大事件が起きていた。


スタヴィンスキー事件から始まる政治的混乱とその後の右翼諸政党連立内閣の成立だった。

スタヴィンスキー事件とはウクライナ生まれの銀行家セルジュ-スタヴィンスキーがバイヨンヌに設立していた信用金庫に担保として収められていた宝石や貴金属類の多くが盗品や贋物であったことから発覚した詐欺事件であり、この事件に当時のフランス与党であった急進社会党の政治家が関与していたことから、ダラディエ内閣打倒を目指す右翼諸団体が中心となって暴動を起こし、そのまま新内閣であるド-ラ-ロック内閣を成立させた。

こうして成立したド-ラ-ロック内閣にとって最初の試練となる事件が起こる。翌年の第二次エチオピア戦争の勃発だった。



史実ではド-ラ-ロックが率いる火の十字団が不参加であったために失敗した政権転覆でしたが、こちらではド-ラ-ロックが参加したために成功しています。

第一次世界大戦に従軍したにもかかわらず、祖国が何も得られなかった様を見ているので史実よりは積極的に動いてます。

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