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第三話 大日本帝国の決断と大きく変化する東アジア史

1940年 6月17日 大日本帝国 東京

「昨日、総理の意向をうかがってきましたが、矢張り変わらないようです。」

内大臣木戸幸一は開口一番に総理の意向を告げた。

「では、町田総理はあくまでも辞職なされると?」

「やはりノンキナトオサンでは荷が重かったようですな」

「政友会が割れなければこんなことには、欧州ではまた大戦がはじまったというのに」

部屋の中にいた人間が話始める。彼らは枢密院議長、内大臣、そして歴代総理経験者から構成される重臣会議のメンバーだった。

「問題はそこです。皆様も知っての通り、ひと月前にはキール失陥を持ってドイツ軍の欧州大陸における組織的抵抗が終了しました。むろん英国からは我が国の参戦を求めるおびただしい数の電文が届いています。」

「宇垣外相からは何かあったかね?アメリカの国務長官とハワイであったんだろう?」

「ルーズベルト政権はフランスやポーランドに対しさらなる武器援助の拡大考えていたようですが、我が国やイギリスと直接的に事を構えるつもりはないようです。」

「となれば、後はシナだけだが」

「おそらく動くでしょうな。これだけの好機ですから、それにソビエトも一緒に何やらしているようですからなぁ、おらが満州にいた時から全く変わっとらん。ロシアとシナが組んで何かするのは。今ここで先んじて叩かねば日清も、日露もすべてが無駄になります。」

田中義一元総理がそう言った。部屋の中に重苦しい空気が流れる。自分たちの決断1つで大日本帝国が築き上げてきたすべてが無に帰すかもしれないからだ。


「しかし、戦いを始めるといっても一体どこで終わらせるのかね、南京はともかくパリやワルシャワは遠すぎる。」

「欧州の戦争は欧州人に終わらせてもらえばいい。我々は手の届く範囲を考えていればいいのです。」

「それで、後継総理だが」

「少なくとも今の政党政治家では無理でしょうな。やはり、超然内閣が必要です。」

「宇垣外相はどうか」

「少々強硬なところがありましたから、アメリカから要らぬ警戒心を持たれそうですな」

「近衛公はどうでしょうか」

「たしかにパリでの一件以降イギリス式の立憲君主制をえらく気に入っているようですし、五摂家筆頭の家柄でもあります。」

近衛家現当主、近衛文麿はクレマンソー暗殺の余波に伴い起こった暴動に巻き込まれてから、親英反仏傾向が強くなっていた。今大戦勃発後は英国側に立っての参戦を訴え続けていた。


こうして大日本帝国は第二次近衛内閣の下で連合国側として参戦する事になる。



1927年3月24日に南京で起こった北伐中の国民革命軍兵士による略奪暴行事件、いわゆる南京事件は東アジア情勢にとっての転機となった。

この事件に対し松島遊郭疑獄事件により若槻民政党内閣を倒閣した田中政友会内閣は即座に中国に対する出兵を開始した。

自国民の保護のみならずイギリス、アメリカの居留民の保護にも尽力した日本軍の行動は高く評価され、

このことが切っ掛けとなって欧州でフランスと対立し、ドイツをめぐってアメリカとも関係が悪化しつつあったイギリスとの間で第四次日英同盟が結ばれる下地ができた。

一方、日本軍をはじめとする列強と戦った中華民国の側では責任を巡って蒋介石と汪兆銘の関係が悪化していき、各地の軍閥を巻き込む形で内部抗争が深刻化していき、このまま中華民国内部の内乱によって東アジアに平和が訪れると思われた矢先に世界的大事件が起きた。


1929年のアメリカウォール街の株価の大暴落から始まった世界恐慌だった。

欧州ではイギリス主導のスターリング-マルクブロックをイギリスとドイツが形成する中、アメリカからの投資頼りだったフランス経済はどん底に落とされてしまう。

こうしてフランスは自らもフラン・ブロックを形成する一方、新たな市場確保のために奔走する。

目をつけたのは1930年から始まった汪兆銘などの反蒋介石派の北平国民政府と蒋介石率いる南京国民政府の争いである中原大戦だった。

この戦いにおいてフランスは軍事顧問団だけでなく義勇軍なども派遣し北平国民政府軍を支えた。

これに対して蒋介石は日本、イギリス、アメリカなどに援助を求めたが3年前の南京事件もあり、フランスが行なっているような大規模な支援は得られなかった。

蒋介石は粘ったが結局、1933年には日本へと亡命しており、この時を持って南京国民政府の滅亡と枢軸中華民国の成立とする場合が多い。



 

田中内閣の成立を史実よりも若干前倒ししています。

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