六十五話 報告会
本日二話目です。
「…………い、おーい!」
「あ、ごめん」
今、私はこの光景に気を取られ、言葉を発することができなかった。だって––––––––
良夜と小鳥遊さんが、互いに指輪をはめあっていたのだから。
「どしたの?」
「いや、話しかけてんのに全然反応しないから何かと思ってな」
「ああ、そういう」
「で、なんかあったか?」
そう聞かれ、私ははあ、とため息をついた。
「もう、手遅れ…………ぽく見えるんだけど」
「………………まじか。とりあえず合流するか?こっちはジェットコースター待ちの列に並んでるし」
「あ、じゃあ先にフードコートらへんで待ってて。私もう少し見てから行くから」
「了解」
それから彼らもまた別のジェットコースターの列に並び始め、楽しそうに談笑しているところを見て、私はフードコートへと向かった。
「ん」
フードコート付近に着くと、先に来ていた翔太は席を見つけられなかったのか、少し離れた花壇の前で立ってポップコーンをつまんでいた。
「おいこらお前」
「いーじゃねーか少しくらい!」
そう言い、彼は拗ねたようにしながら花壇の縁に腰を下ろした。
「食べるか?」
「ありがと」
差し出されたポップコーンを貰いつつ、私もまた彼の隣に腰下ろした。
「…………で、どうだった?」
私は、認めたくはないと思いながらも正直に思ったことを口にする。
「すごく楽しそうだった…………かな。お似合いっていうか、ピッタリっていうか」
「だよなあ」
翔太は右膝に肘をおいて頬杖をつき、嘲笑じみた笑いをする。
「こっちもそんな感じだ」
こっちも…………まどかはああ見えて少しフランクなところがあるが、そんな彼女がカップルのように見えたのだろうか?
「最初はつっけんどんな物言いだったんだけどさ、途中からちゃんと笑うようになってんの。俺、合流するって言ってからもちょっと見てたんだけど」
あまり続きを言いたくなさそうに表情を曇らせながら、彼はそれでも続けた。
「あれ、多分そっちほどじゃないんだろうけど…………なかなかに仲良さそうだったんだよな」
どうなるんだろうな、そう言いながら彼は再びポップコーンに手を伸ばそうとして…………
「……なあ、未亜」
「ん?」
「思うんだけどさ、無理に白撫さんと良夜をくっつかなくても良くないか?今の組み合わせの方が俺的には良さそうな気もするんだ」
そう、呟いた。
「………………いけません」
「……未亜?」
「私はご主人様から命令されていますから。お嬢様と一ノ瀬君を交際に誘導するように、と。ですから、それは絶対に受け入れられません」
そう、これはあくまでも仕事なのだ。金銭が発生する関係が成立している以上、それを裏切ることも私情を挟むことも許されない。
「そこにお嬢様をどう思うかも、お嬢様が春原君や一ノ瀬君をどう思っているかも関係ありません」
私は立ち上がり、彼に背を向けて歩き出した。
「では、今度は私がお嬢様の方を見に行きますので」
「そうか」
翔太もまた立ち上がり、なにを思ったのか私の前に立った。
「でもよ、その前に飯食わね?俺腹減ったんだけど…………」
「勝手にどうぞ」
彼が空腹感を感じようが、何を思おうが私には関係のないこと…………
ぐうううう…………
「へうっ」
……………………私には、関係ないことっ!
「ふっ」
「わ、笑わないでください!」
「…………俺、お腹減ったんだけど?」
「…………しょうがない、この未亜ちゃんがお昼ご飯に付き合ってあげようじゃないか!」
笑いながら言う彼に、私もまた笑いながら言った。
「おう、じゃあ何食う?つっても、どこも人が多いけどな」
「あ、あそこなんてどう?」
そうやってお昼を考えながら、私たちはご飯の後で再び他の四人を探しに行くことにした。




