第六話 午後、学校にて
2020/06/14 一文増やしました。
現在、五時間目の授業中。今はラノベを読んでいる。僕の席は廊下から三列目、後ろから二番目だ。ここなら、ラノベを読んでいてもバレる心配はない。
「……い」
…………
「おい、一ノ瀬ェ!」
「は、はい!」
「お前何やってんだ、机の下でコソコソと!」
「な、なにやってるって、そりゃ……」
ラノベを、読んでいる……って、バレた?
「おいっ!なんだそれは!」
「ラノベです」
「なぜ授業中にそんなものを持っているんだ!よこせ!没収だ!」
没収!?それは困る!
「いやです!」
「なら、なぜ授業中に出すんだ!」
「補習があるのに、いつ読めってんですか!」
僕は、心を込めて、いや、心を言葉にして伝えた。
「読みたいです!」
「わかった。没収だ」
先生が、無理やり奪おうとしてきたので、必死の抵抗を試みる。
「やめてください!分かりましたしまいますから!」
「ならさっさとしまえ!」
はい神。回避率百パーセントだぜ。
先生が黒板の前まで戻ったのを見て、僕は再びラノベを取り出した。すると、先生は再び僕の方を向いた!
「おいこら一ノ瀬ェ!」
「しおりを挟もうとしただけです!」
「ならさっさとしろぉ!」
まったく、油断も隙もあったもんじゃないな。多分、僕が使う場面じゃないんだろうけど。
ふと左前方を見ると、白撫さんが軽蔑する目でこっちを見ていた。その視線から逃げるように右前方へ目を動かすと、そこにはクスクス笑っている翔太。他人事かよ。
「おいこら一ノ瀬ェ!」
「なんですか何にもしてないですよ!」
僕は、ありのままの事実を伝えた。なにもしていないと。
「そうだ!なにもしていないから問題なんだ、教科書を出せ教科書を!」
「あっ」
そりゃ、バレるわ。今度から気をつけないとな。
「ふぅ……」
やっぱり、授業中に読むラノベは緊迫感があっていいなぁ。丁度、内容もシリアスな場面だったし。それじゃ、次の本を……
––––キーンコーンカーンコーン
お、授業終わったのか。
特に何を学んだわけでもないけど、なんとなく背伸びをしておく。
「んんん〜〜〜……」
次に、背中をひね……ろうとして、白撫さんと目があった!あっ、ああっ……
すると彼女は席を立ち、一歩、また一歩とだんだん僕に近づいてくる!
だ、だめだ!今の僕は、蛇に睨まれたカエル!もう、逃げ道なんてありはしない!
そして、僕と白撫さんの距離、机一個分。あ、短い方ね。そこから、白撫さんは腕を組み、蔑むように僕を見た。
「あなた、勉強する気はあるんですか?」
その問いに対して、僕は常識だと言わんばかりの自信を持って答えた。
「そんなのあるわけ……」
「は?」
「ありますありますっ大いにあります今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」
「なら、なぜ授業中にそんなものを?」
そんなもの、というのは机の上に置かれているラノベだ。
「いや、その、これは……なんと言いますか、魔が差した、というか……」
僕がそう答えると、白撫さんは「はぁ……」とため息をこぼした。
「本を読むな、とは言いません。国語の勉強になりますからね。ですが、別の教科を疎かにしてはいけません。授業中はちゃんと授業を受けてください。でないと、ずっと補習から抜け出せませんよ?」
「それは困る……」
「でしたら、授業中に他ごとはしないように。では、私はこれで」
彼女はそう告げると、自分の席に戻っていった。
それを見て、僕は「よし、次はどれ読もう」と考えたが、白撫さんも僕を心配して言ってくれたのだ……と思うので、流石に今日はやめておこう。
「ふぅー……」
僕は鞄の中から次の教科である国語を取り出した。
えーっと、現代国語だから……あっ、ひなちゃんせんせーか。
俺が教材を机に置いたところで、ひなちゃんせんせーが「はいはーい」と教室に入ってきた。そして、僕の方を見て、「ゔぇっ!?」と、驚いた。
「みみみ、みんな!つつ、ついに一ノ瀬くんの反抗期が終わりましたよー!先生は嬉しいです!」
「いや、別に反抗期じゃないんですが」
あ、でもまだ反抗期来てないよな。いつ来るんだろうな。
「どっどどど、どうしましょう!今からケーキ買ってきますか?え、え?」
「いや、要らないです」
俺が真顔で却下すると、せんせーはシュン、と悲しそうに縮こまった……元から小さいな。
そんな感じで一通りひなちゃんせんせーが騒いだ後、少し経って鐘がなった。
––––キーンコーンカーンコーン
「じゃ、はじめましょー!」
「りーつ、れー」
「「「お願いしまーす」」」
まず、ひなちゃんせんせーが黒板に白いチョークで文字を書いていく。
えーと、なになに?『太宰……
そこからは、授業中の記憶がなかった。
「……て」
お、声が聞こえるな。って、さっきまで聞こえてなかった……?
「おーきーてーくーだーさーいー!」
「ぬっは!」
しまった、また寝ちゃってたのか。
「す、すみません」
「いーえ、いいんです。前回より進歩しましたもんね。以前なら、ノートに字を書くどころか教科書すら出ていませんでしたもんね。前に進んだんです。今はそれだけで十分ですよ」
そ、それって……
「じゃ、おすみなさい」
「そういうことじゃないです!」
ひなちゃんせんせーに怒られてしまった。
「起きてください」
「うん?」
「もうすぐ、次の授業が始まりますよ」
え、もうそんな時間?
「あ、あれ?授業は……って、あ……いや、えと……」
まずい、白撫さんに叱られるっ!……と、思ったのだけれど。
「大丈夫ですよ、努力しようとしたのはわかりましたから。私だって、何にでも怒るわけではありません」
どうやら、白撫さんは理解してくれたらしい。『努力しようとした』という、努力までいってないふうに見られたらしいけど。
この後、今日最後の授業も同じことをして、白撫さんに少し呆れられた事と、やっぱり終始クラスの男子(もしかしたら女子もかもしれないという、翔太情報も)から殺意のこもった視線を向けられていたのは、言うまでもないかもしれない。
投稿したくてたまらなかったので、投稿します。
やっぱり、書いてある話があると、投稿せずにはいられないですよね。
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