五十七話 襲撃
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「あっ!見て見て、ンッヒーだよ!」
そう言って、小鳥遊さんはよく分からない化け物の銅像方へ駆けていく。え?待ってあれがンッヒー?なんか想像してたのと違う!
「かわいい!」
かわいい…………?いや、人によってはそう感じるんだろうね!
「写真撮ろー!」
「あ、うん」
僕もまたンッヒーの方へ行き、小鳥遊さんの隣に並ぶ。小鳥遊さんはスマホを取り出して写真アプリを起動した。
「ん…………もうちょっとこっち来て!」
「へ?」
小鳥遊さんはいわゆる自撮り棒というやつを持っていないらしい。僕も持ってないけどさ。
僕はほんとちょっとだけ、間合いをはかる剣士のように、ジリっと近づいた。
「んもー!そんなんじゃダメ!もっと!」
そう言った小鳥遊さんは僕の腕にスマホを持っていない右手を絡ませ、体を密着させてきた。もう僕の頭はショートしてる。
「ほら!ぴーすぴーす!」
「ぴ、ぴーす……」
カシャッ。
「おっけー!今送っとくね!…………あ」
なにを思ったのか、小鳥遊さんはスマホを操作する手を止めた。
「りょーくん、ナイン交換してないね!」
「そういえば」
僕らはナインを交換して、写真を送ってもらった。
「んふふー」
小鳥遊さんはこれ以上ないと言えるほどゴキゲンな様子だ。そのまま蝶になってきらめく風に乗って他のグループと合流したい。
が、そんなことは叶わず。というか、もっと悪い事態に。
「あのっ!」
急に後ろから話しかけられ、振り向こうとして……
(へい小鳥遊さん)
(なんだいりょーくん)
(これはマスコミってやつだよね?)
(そうだね。後ろにたくさんいると思うよ)
そう小声で呟いた小鳥遊さんはなにを思ったのか僕と手を繋ぎ、振り返った。なんで?
「ちょっといいですか!?」
「はーい順番ですよー!」
なんだこの状況。小鳥遊さんが答えた瞬間、ザッとカメラやマイクを持った人たちが僕たちを囲んだ。
「彼とはどう言う関係で!?」
「クラスメイトです!」
「手を繋いでいるのは!」
「彼としては違いますけど、私からはそういうことです!」
おおいどういうこと!?そういうことってどういうことなの!?
「「おおおおおー!」」
「では、以前のインタビューの!」
「そうです!あの男の子です!彼は覚えてなかったので一からですけど!」
「「「おおおおおおお!」」」
おおおおじゃねえんだよ!
「彼のどこに好意を!」
「全部です!」
「あまり冴えない顔ですが!」
泣くぞっっっ!
「ちっちっち!見てください!」
小鳥遊さんはちょいちょいと手招きして、僕の髪を触り始めた。
「ほら!」
「「「おおおおおおおお!!」」」
ねえほんとになんなの?
「イケメンでしょ!」
「「わりと!」」
「えっ僕わりとイケメンだったんだ!」
あっ。
思わず声を出してしまった。
「はい!わりとイケメンですね!」
僕の声に、正面にいる女性インタビュアーが答えてくれた。あー気分がいいっ!
「ところで小鳥遊さん!今日は半袖のTシャツにデニムのサロペットショートパンツというコーデですがどんなテーマですか!」
「特にないけど軽くおしゃれにして動きやすくしてます!」
この瞬間に、あ、小鳥遊さんおしゃれに疎いんだなって思った。僕と同じ匂いを感じるよ。
「今日オトすつもりですか!?」
「毎日そのつもりです!」
すごいこと言ってくれるね……
「あ、もうそろそろいいですか!いこっ」
小鳥遊さんは僕の名前は出さずに手を引いた。そんなところに気遣いというか、配慮が感じられる。
「はい!ありがとうございました!小鳥遊さん、頑張って!」
「ありがとー!」
思わぬ襲撃だった。




