五十四話 見ちゃったよ。
「あ…………」
僕が教室に入ると、白撫さんは驚いた表情でこっちを振り返った。その手は、もうじき口付けがされるだろうというところで、止まっている。
それを見た瞬間、まるで脳が回転しているような感覚に襲われた。
「…………ゆ、う、と?」
「な、なんだよ」
小鳥遊さんは白撫さんの手を掴んでいた春原君の手をぺしっと叩いてから白撫さんの手をとり、かがんでいる彼にずいっと近寄った。
「離れようね?」
「ぐあっ」
春原君はぐ〜っとつむじを押され、腰を90度以上曲げる姿勢になってしまった。
「ねえ、どこに初対面の女の子の手にキスする男子がいるの?」
「そっ、それは俺の勝手だろ」
「ふ〜ん?」
小鳥遊さんはチラッと白撫さんの顔を見た。
「白撫さん困ってたけどな〜?」
「うぐっ……ごめん」
「いっ、いえ、気にしてないので」
そう言うと、春原君と白撫さんは席についた。それを見た小鳥遊さんも、「やれやれ」と呟きながら、自分の椅子に座る。
僕も僕で席に座ったが、それからずっとあれやこれやと頭の中で考えがぐるぐると回っていた。
初対面なのに、キスされても嫌な気持ちにならないのかとか、それだけ認めているのだろうか、とか。
そんなことが、心のどこかでずっと引っかかっていた。
「むむむむむ…………」
隣に座る未亜が斜め後ろを軽く睨みながら唸っている。なんだこいつは。
「どうしたんだよ、未亜」
「いやね……あの小鳥遊って子…………私とキャラ被ってない!?」
「そこかよっ!」
確かにそうかもしれねえけど……今考えるとこ本当にそこであってるか?いや、明らかに違えんだよな。
「まあ、それはいいとして」
「あ、いいんだ」
「どうしようね…………」
「だな……」
転校生二人による今の軽いアクシデントで、良夜と白撫さんの間には確実に溝ができたと思う。それが深いか浅いかにたいした違いはない。仮に浅かったとしても、このままだと必ず深くなっていく。そうすると、俺と未亜で考えている『二人をくっつけさせてイチャイチャラブラブ大作戦』が崩壊してしまう!
「ひとまず『イチャイチャラブラブ大作戦』は停止して、あの二人を前の状態に戻さないと」
「よし、じゃあ後で作戦会議だ」
「うん、いつもの場所に集合ね」
「了解」
さて…………いつもの場所ってどこだ?
…………良夜、ちょっと嫌な気持ちになってんな、あの顔は。
ま、後で話聞いてやるか。
「じゃ、そういうことで」
ん?
四限目が終わったお昼の時間、先にトイレを済ませていると、廊下で翔太と相模川さんが話しているのが見えた。
「何がどういうことなの?……わっ」
声をかけると、二人からガシッと肩を組まれた。
「俺はお前の味方だぜ」
「なんでも話してくれたまえよ〜?」
なんの話だよ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
村人ぶー(B)です。
最近、別のお話を書いてます。アイデアが浮かんでは書き、浮かんでは書き、と。
でも、全く進みません。
三作品くらい同時に書いてます。
…………さては馬鹿か!?
まあ、来世あたりに公開しますんで、その時はよろしくお願いします。
では!
村人Bでした!ばいばいヾ(・ω・`)




