三十話 一目惚れですか、なに言ってんですか
中に入ると、一人のおばあさんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい、遠いところからよく来なすった。ゆっくりしていってくださいねぇ」
彼女は僕達に柔らかい笑顔を向けた後、翔太の方を見る。
「あんたは手伝いな」
「えっ!?俺も勉強しにきたんだけど?」
今のやりとりからして、翔太のおばあちゃんだろう。
「あらそうかい、なら姉さんでも呼んできたらどうだい。ゴールデンウィークの内はここにおるみたいなこと言うとったから」
「あー……」
どうやら翔太にはお姉さんがいるようだ。でも、翔太の反応を見るにあまり仲が良く無いのだろうか。
「ま、そんなことは後にして、今は部屋にお入りなさいな。翔太、ほれ。鍵。あんたが案内したりなさい」
「はーいはい。じゃ、いこーぜ」
「ゆっくりしていってくださいねぇ」
「はい、ありがとうございます」
翔太はおばあちゃんから鍵を二つ受け取ると、靴を下駄箱に入れて右側奥の階段を上っていった。
僕らもお礼を言ってから階段を上……ろうとしたけどエレベーターあるじゃん。
「どっちでいく?」
「すれ違ってはいけませんし、階段で行きましょう」
と、階段で行くことになったんだけど、今のやり取りで翔太が何階に向かったか忘れてしまった。
おばあさんはすでに別のお客さんに接客しているので、今聞きに行くわけにはいかない。
「ま、とりあえず上ってみよー」
相模川さんが階段を上っていったので、僕もついていった。
二階に上がって、廊下を見てみると……
「うわっ」
「きゃっ」
むにっ。
……むにっ?……「きゃっ」……?……これはっ!
僕は咄嗟に一歩後ろに下がって、頭を下げる。
「す、すみません!」
声からして、恐らく女性の人とぶつかってしまったのだろう。謝る以外手はない。
「…………ッ!……ううん、こっちこそごめんね?前見てなかったから」
許してもらえたようなので顔を上げると、そこにはめちゃくちゃ綺麗なお姉さんがいた。
「……?私の顔に何かついてるかな?」
「あっ、いえ、すみません」
どうやら僕はお姉さんの顔を見て呆けていたようだ。
僕は慌てて目を逸らし、踵を返そうとした。したんだけどさ。
右側から翔太の声が聞こえた。
「おー……いおいおいおいおいちょっと待てや」
「あれ?」
と、お姉さんがハテナマークを浮かべて、言った。
「翔太だ。なに、帰ってきてたんだ?」
ん?お姉さんと翔太は知り合いなのか?
「うわー、面倒なのに会った……クッソお前ら逃げるぞ!」
そう言って、翔太は走り出そうとする。が、お姉さんが翔太の首ねっこを掴んで制止する。
「待って待って、久々にお姉ちゃんに会ったってのに挨拶もしてくれないの?」
「ちっ」
「えっ!今舌打ちしたよ!聞いた?良夜君!」
お姉さんは急に振り返って僕に言う。
「えっあっはい……え?」
なんでこの人僕の名前知ってんの?
「えっ、えっ?」
僕が戸惑うと、彼女は「あっ、言っちゃった……」と、困った表情を浮かべた。
「は?……はぁ……もういいや。とりあえず、部屋までいくぞ。姉ちゃんもついてきて」
それを聞いた翔太は、呆れた様子でそう言った。
「えっ、いいの!やったー!良夜君のお部屋ー!」
と言うことで、僕らは階段を二階へと上がって右側に曲がった、一番奥の部屋に入る。
靴を脱いで靴箱に入れ、引き戸を開く。すると、畳の匂いが鼻をくすぐった。
「おお……」
正面には机を挟んで座椅子が四つ並んでいる。そしてその奥が大きな窓となっており、手前にロッキングチェアが二脚あり、その間に机がある。
「いい景色か?」
僕がボーッとしていると、左から翔太が声をかけてきた。
「うん、初めて見た」
窓からは、煙がもくもく立ち昇っていて、多くの古民家が並んでいる。なんだかほのぼのしていて、景色というよりもこの雰囲気が好きだ。
「まぁ、眺めるのは後でもできるから、とりあえず座ってくれよ」
僕らは椅子に座った。座椅子が四つしかなかったので、翔太は窓辺からロッキングチェアを持ってきた。
「さて、と。とりあえず、こいつについてなんだが」
翔太がお姉さんの方を親指で差しながら言うと、お姉さんはほおをぷくっと膨らませながら言った。
「お姉ちゃんのことこいつって言うなー!」
「あーうるせーうるせー。で、こいつが俺の姉ちゃんだ。良夜からしたら要注意人物だな」
なるほど、翔太のお姉ちゃんで、僕の……要注意人物?
「……まったくもー。えっと、私は翔太の姉の、吾野 凛です。よろしくね、良夜君!」
…………誠に不可解である。
「なんで僕の名前を?」
僕がそう聞くと、翔太が少し困った顔でこっちを見た。
「……ほんとに聞くのか?」
「なんで?」
「いや、まーいいけどさ」
そう言うと、翔太は一度凛さんを一瞥してから、もう一度口を開いた。
「中学三年の頃、卒業アルバム買ったろ?あれ、姉ちゃんが見たんだよ。んで、ウチのクラス見てたんだけどさ」
翔太は、はぁ……ため息を吐いてから続けた。
「お前に一目惚れしたそうでーす」
なあに言ってんの。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
……いえええええい!てすと!終わったのです!僕は自由!あーいむふりー!
と言うことで読んで書いて寝ます。飲んで食って寝るじゃないですよ。
まあ、更新頻度上がるんかって言われたら……多分、上がる……かな?って感じですね。
ところで皆さん、姉派ですか?妹派ですか?僕は姉派です。ん?妹派?これは戦争ですね。こっちはたけのこ持って戦います。そっちはキノコ持ってきてください。
さてさて、なんだかだんだん長くなってきている後書きですが、この調子で伸ばしていきたいと思います。
では、今回はこの辺で。テストも終わって疲れがたまってるんでもう寝ます!(現在午後九時)
おやすみなさ……い……




