二十二話 白撫さんとお出かけー③
今、フードコートで席を探している。でも、ちょうどお昼時というのもあり、窓際にあるカウンター席ですら一つも空いていない。
「どーする?」
「そうですね……下で何か買っていくか、他の店、ファミレスなどに行くか、でしょうか」
「じゃ、下で何か買っていこうか……すごい見られてる気がするし」
「そうしましょう……とても見られている気がします」
ま、無理もないよね。となりにいるのは白撫さんなわけだし。
ということで、一階のスーパーでご飯を買っていこうとしたんだけど……
「あ、あの!」
なんか、見知らぬ人から話しかけられました。ふーあーゆー?
「な、なんでしょう?」
声をかけてきたのは、僕らと同じくらいの年齢であろう女の子。
「こ、これあなたですよね!」
と言って見せられたのは、さっき僕が殴り合いをしていたときの映像。
「え、ええっと……」
あぁ、気持ち悪い。トラウマが……
「そ、そうですけど……なんでこれが?」
本当に疑問……じゃないっ!何人かスマホで撮影してたな!あれ、ネットに流したのか!
「あ、あれ?知らないんですか?今、ナインのトレンド一位なんですよ?」
トレンドというのはナイン内での機能で、一定時間内にたくさん呟かれたキーワードのランキングである。それになるには何千ものつぶやきがないといけないけど……な、なんでそれに僕が?
「うわ、ほんとだ……」
実際に自分のスマホで確認してみたけど、ほんとに僕の映像に関するつぶやきがトレンド一位なんだけど……ってかなんだよ、『#覚醒彼氏』って。彼氏じゃねえよ!
「ダントツなんですよ。ていうか、キーワード上位十位以内が全部この動画に関するキーワードなんです!」
「は、はは……そっかー……」
僕はなんだか嫌な予感がしたので回れ右をしようとしたが……
「あの、握手してください!」
「なに言ってんですか」
なんだ?今のじぇーけーはたかが一瞬トレンドに乗ったくらいで握手をせがんでくるの?
「握手、してあげればいいじゃないですか」
白撫さんがそう言ったあと、女の子の視線が一気に白撫さんの方へ向いた。
「あっ、彼女さん!うわーかーわいいなー!ねえ、どうやったらこんなに可愛くなるんですか?なんでこんなにおっきいんですか?何食べてるんですか?」
女の子がずずいっと白撫さんに近寄る。
こんなふうに聞かれたら、普通少しは戸惑いそうなものだが白撫さんは特に困った様子もなく言った。
「彼女じゃないです」
「あっ……そうですか」
それを聞いた女の子は少ししゅんっとした後、他のことを聞いてきた。
「お二人はここで何してるんですか?」
この話題の飛躍具合は、流石じぇーけーだな。
「席を探してたんですけど、無くって」
僕がそう言ったのを聞いて、女の子は「なるほど」と、一言。
「じゃ、私の使ってるところ使います?もうご飯も終わって今から退くところなので。二人掛けなので狭いかもですけど」
おお、それはありがたい。
「いいんですか、ありがとうございます」
「いえいえー、こっちですよー」
歩いていく女の子をついていく。
「はい、ここです。じゃ、私はこれで〜」
そう言うと、女の子は手をヒラヒラと振って歩いて行った。
「じゃ、何か食べようか」
「ですね、そうしましょう」
白撫さんは、少し間を空けて「あ、あの」と、言った。
「その、さっき喧嘩になった時に、小さな声で『トラウマがあるってのに……』と言っていたのが聞こえまして」
えっ……あれ、口に出てたのか……
「差し支えなければ、えと、トラウマについて教えていただきたいなと……」
どうして、気になるのだろうか。
「じゃあ、その前にどうして気になるのか聞いてもいい?」
「あ、はい。その、これからは補習などで一緒にいることが増えますから、触れられたくないことは極力触れないようにしたくて。そのために、知りたいな、と」
あ……そういうことね……
僕がチラッと白撫さんの方を見ると、彼女はボソッと「ダメですか……?」と呟いた。
……他人に言っても大丈夫なのかな。言ったことないから分からないけど……知り合って一月しか経ってないけど……多分、白撫さんはそれを知ってどうこうする人……じゃあないだろう。なら、言っても……いいか。
「じゃ、さ。思い出して気分が悪くなったら、白撫さんが助けてね」
「は、はい!もちろんです」
……………………ん、話すか。
「……中学の時のことなんだけどさ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今日の下校中、駅の入り口前でキスしてるカップルがいやがりました。資料提供ありがとうございますっ!( #`꒳´ )




