百六十話 刺客(?)
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陽光が瞼の奥まで突き刺してくるような感覚を覚え、私は目を覚ましました。厳密には目を開けたわけではなく、睡眠から意識を少し取り戻した、というのが正しいでしょう。
「んん……」
なぜか鼻孔が喜んでいるのを感じながら、私は寝返りを打ちます。すると、確かな温かみ、どこか安心するような雰囲気。
「……?」
なぜ温かみが?
私の意識は一つの疑問によって完全に覚醒させられます。
「ぇぅ……」
私はゆっくりと体を起こし、温度の正体を究明します。
「~~~~~!?」
ま、また添い寝!? 何回やらかせば気が済むんでしょうか私は! ええ、ええ幸せですけどね!? うれしいですけどね!? 起きたときすっごい気まずいんですよ!!
「ッ…………」
荒ぶる私とは正反対の、穏やかな寝顔。とても愛らしく、いつまでも目が離せなくなってしまいそうな……
「……良夜君…………」
日々の私の思考、その九割強を占める想い人の名前が、無意識に口から零れ落ちました。
この人は、私の気持ちを知っている。押しとどめてもいくらか溢れてしまう想いを、受け止めてくれている。でも、その受け皿は私の分しかないわけじゃなくて。きっと彼の友人も、私のほかの、彼を想う人も、受け止めたいと思っているんだろう。私は彼だけで満たされても、彼は私だけで満ちてくれないかもしれない。
「……ねぇ、良夜君」
それでも今は、今の時間だけは、この人の時間は。
「私の」
私だけの────────
『ピンポーン』
「んっつあい!」
私だけのインターフォンッ!!!!!!
磁石のようにいつの間にか近づいていた顔を弾く様に離し、気合で立ち上がります。
「う、は、はい……」
突然大きく動いたことで立ち眩みに見舞われながらも、壁を頼りにインターフォンにたどり着き訪問者を確認します。
『学校帰りのお見舞いきましたん!』
「お、おみまい」
画面に映っていたのは制服を着た未亜でした。
『体はどう? 暑い? 寒い? っていうか外暑いから入れて!』
「え、あ、ちょ、ま」
えとえと、今家には一応病み上がりでお昼寝中の良夜君がいて、未亜は元気だから良夜君を起こしちゃうかもしれなくて、っていうか部屋に良夜君がいるのがばれちゃったらどんなふうに茶化されるかってそこじゃなくって、ああもう考えがまとまらない!
『早く開けて暑い……』
「え、あ」
「ってなんだ開いてるじゃん!」
私がどうしようか迷っていたところ、扉にカギをかけ忘れていたようで未亜は勝手に入ってきてしまいました。
「まどか体調は大丈夫?…………って」
インターフォンと連動するモニターがキッチン横だったため、ベッドで横になっている良夜君が未亜の視界に入ってしまいました。
「あ~……お嬢様、避妊しました?」
「んなっ……!」
こ、この子はいきなりにゃにをっ!
「そ、そんなことしてません!」
「し、してないんですかっ!? だ、だめじゃないですかいくら権力があるからってそんな! なんて大胆な!」
「あ、ち、違くて!」
「…………仮病は、良くないですよ。クラスのみんなは準備頑張ってるんですから」
「ちがうのぉ!」
ああもう一人で盛り上がられると訂正しようがありません!
「ん、んぐ……あれ、僕、寝ちゃってた……」
そんな風に騒いでいると、ベッドで寝ていた良夜君が起きてしまいました。
「あれ、白撫さん、もう体調は大丈夫なの? 回復速いね」
「あ、い、いえ、おかげさまで」
「あ、相模川さんも来てたんだ」
さっきの未亜との会話から、良夜君と顔を合わせるのは気恥ずかしいです・・・・・
「…………二回戦かな? じゃっ、私はこれで!」
「なにが?」
未亜が勝手なことを言って部屋から出て行こうとします。
「だから違うんです! まって、未亜、待って!」
それを阻止するために私は振り返った未亜に抱き着きました。
「ちょっ白撫さん! そんなすぐに風邪は完治しないから! もうちょっと安静に」
「良夜君も手伝って!」
ほんとに! この子の誤解は解いておかないと! 世界が! 壊れちゃう!
「ええい一回も二回も変わりませんよヤることヤっとけ青春男女!」
やることやっとけってなんですかぁ!
「あなたも青春男女の一員でしょうに!」
吾野君とお付き合いしてるでしょっ!
私がそういうと、未亜は抵抗をやめてぴたりと止まりました。
「み、未亜?」
「……そっそそそ、それはさ、ち、違くない?」
顔を覗き込むと、顔を真っ赤に染めた未亜が。
……一転攻勢!
「どうなんですか、吾野君とは」
「いや、だから」
「ほらほら、私とお話しませんか? お見舞い、来てくれたんですよね?」
「ちょ、ほんとにぃ……!」
「ね?」
「で、でも仮病なんでしょ?」
「いえ、良夜君がか看病してくれたので少し良くなっただけですよ」
「そ、そんな早く治るのかな~、みたいな」
「あ~私なんだかめまいしてきました。早く座りたいなあ」
「じゃ、じゃあ離してくれれば」
「お見舞い、だれかきてくれないかな、さみしいなあ」
「……こなきゃよかったあ!」
「あ、まって、ほんとになんだかめのまえが」
未亜の背中がぐにゃぐにゃぐにゃぐにゃ……
「はい二人とも中はいろうか」
「…………はい」
「はいぃ……」
良夜君に支えられながら、私たちは部屋に戻るのでした。
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