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百五十七話 ふわふわしてます……

 あの後どんな気持ちで顔を合わせたらいいのかわからなくなってしまった私は、夜ご飯だけ渡して部屋にこもっていました。


「ふぅ…………」


 そうして迎えた翌日。最近は濃い良夜くん成分を摂取していたせいで、夜数時間離れていただけでも禁断症状が出てしまうみたいです。


 私は本能に身を任せて隣の部屋へ。


「…………開いてる」


 昨日閉め忘れたのか、良夜くんの部屋の鍵はかかっていませんでした。

 なにかあってからでは遅いですし、中に起きている人間がいた方がいいですよね!

 そうやって自らの行為を正当化して私は部屋の中に入りました。


 なんとなく、そろりそろりと足音を消して廊下を進みます。どうやら、良夜くんはまだ寝ているようですね。


「…………かわいい」


 彼の前までたどり着いた私は、ふとそんな言葉をこぼしてしまいました。そして、一度溢れた想いは止まらなくて。


「かわいい、かわいい……」


 本当に可愛らしい。安らかな寝顔は見ているだけで癒されます。ずっとこんな時を過ごしていたくなってしまいます。


 私は良夜くんの頭に向かって手を伸ばしました。その瞬間に彼は寝返りを打ち、そのお顔が真上を向きます。


「かわいい」


 心の底から愛おしい。この世界にこんなものがあってもいいのでしょうか。それも、私の目の前に。


「かわいい」


 彼の頭を撫で、髪を梳きながら何度もそう口にします。


「かわいい、かわいい……」


 この人の全てが欲しい。私で包み込んでしまいたい。食べてしまいたい程に好き。彼が望むなら、私の全てを明け渡してもいい。なんなら今からでも…………


「すき、すき…………!」


 心が溢れてしまいます。

 今日はどうしたのでしょう。いつもならしない(ちょっとだけしてますけど)ことをしてしまっています。普段は無理やり押さえつけられているのに、今はそれができません。きっと、昨日彼が寝ている時に溢れてしまったあの言葉が原因なんでしょう。


「良夜くん、すき…………!」


 今すぐ良夜くんの着ている服を剥ぎ取って私の部屋に持って帰りたい。いえ、そんな贅沢は言わないので抱きついて寝たいです。

 そう思うと、身体が自然にお布団の中へ入ろうと動いてしまいました。


「…………はっ!」


 危ない危ない、また昨日みたいなことをしてしまうところでした。


「…………よし」


 昨日とは違って、今日はちゃんと可愛い下着をつけてきたのでもしそうなっても大丈夫ですね! もちろんわたしから誘うつもりではないですけど。

 でも良夜くんは優しいので、私がそんなわがままを言えば彼はずっと私のそばにいてくれるでしょう。


「…………良夜くん」


 彼はどこか私に好意を持ってくれているようにも見えます。ですが、どうにもその好意の焦点があっていないようにも思えます。なので私はいつか、良夜くんがちゃんと私のことを好きになってくれるまで…………


「んぅ……」

「っ!」


 びっくりしました!

 今のは吐息がもれただけ……ですよね。

 その無意識の一挙手一投足が繰り出されるたびに愛おしさが増します。何度も何度も想ってしまうけど、それが可愛くて愛おしくて…………


 もう、歯止めが効かない。

 何を想ったのでしょう、私は欲望のままに良夜くんの顔に自分の顔をちかづけ…………


「…………ん? 白撫さん?」


 ないっ!

 ぐいっと首を曲げて顔を無理やり遠ざけます。


「おおおおおはようございます! 鍵が空いていたので何かある前にと思って知らせに来ました! では気をつけて!」

「え、あ、うん……?」


 私は急いで外へ逃げました。


「はぁ、はぁ––––!」


 外気を吸って落ち着きます。


「…………今日の私、どうしちゃったんでしょうか」


 なんだか頭がふわふわして判断力がぽわぽわしてて、身体の奥があったかくて、冷たくて…………


「くちゅん!」

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