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百五十五話 なんて言ってたんだろう

「できましたよ」


 机に置かれたのは、お粥。梅干しが一つ乗せられており、なんとも定番といった感じだ。


「ありがとう。それじゃ、いただきま……」

「まて」


 白撫さんが放った言葉に、僕は手を伸ばしたままピタリと静止する。ていうかそれ犬に言うやつでは? 僕犬じゃないよ?

 彼女は傍に置かれたスプーンをとり、粥と梅干しを少し乗せた。


「ふー、ふー……よし」


 よし!? やっぱり犬扱い!? っていや、そうじゃなくて!


「あ、あの、白撫さん? 僕自分で食べ」

「だ、ダメです。えっと、その、無駄にエネルギーを使ってはいけないので。ほら、あ、あーん」


 頬を少し赤ながらも絶対に引かないぞと言う意思が目から伝わってきた。


「……嫌ですか?」


 それでも僕が渋っていると、上目遣いでそう聞かれる。

 ええいままよ!


「あ、あーん」

「ふふ、あーん」


 僕が意を決して口を開けると、白撫さんは嬉しそうにスプーンを口の中に入れた。


「…………すっぱ」

「梅干しですからね」


 顎の付け根あたりがきゅーってする。よくすっぱいもの食べたらなるよね。

 美味しいなーとかそういえばこれ白撫さんの手料理だなーとか考えながら飲み込む。


「いいですかね。じゃあ……ふーふー……あーん」


 まだ続くの!? もしかするとこれ最後まで繰り返す感じかな!?


「あ、あーん」


 まあここで止まっていても仕方ないので口を開ける。はたから見ると鳥の餌やりみたいに見えるのかもしれない。


「お茶も飲みますか? 流石にこれは私からはあげられませんけど」

「うん、もらうよ」


 …………白撫さんから直接お茶を? それって口移し…………無理だね★

 頭の中で広がりそうな妄想を消し炭にしつつお粥を食べ進める。


「そういえば、お薬はどこに置いてありますか?」


 なんとかして食べ終わると、白撫さんが風邪薬の所在を聞いてくる。


「えーと……向こうの戸棚に市販のやつがあったと思う」

「わかりました」


 彼女は立ち上がり、薬の入った瓶を持ってきてくれた。

 でもね白撫さん。君は今制服でスカートなんだよ。勢いよく動かれたら困るよ! 言えないから仕方ないけど!


「さてと…………歯磨きはできますか?」

「それは流石に」


 できなかったら入院した方がいいレベルの重症だよ。

 ……できないって言えばよかったなーなんて思ってないし。


 歯磨きを終えて布団へ戻ると、白撫さんが布団の上で正座していた。


「っと、あの、ちょっとどいてもらえると助かるかな〜、なんて」

「どうぞ!」


 白撫さんは目を光らせながら自分の太ももを叩く。


「どうぞ!」


 …………もういいや。


「失礼しまーす……」


 顔を外向きにして、白撫さんの太ももに頭を乗せる。

 あ、柔らかい。薬の副作用と相まってすぐ寝れそう。


「おやすみなさい」


 彼女はそう言って優しく頭を撫でてくれた。


 だんだんと意識が遠のいていく。今日はあまり働かなかった頭が、どんどんと機能を停止する。


 髪を撫でる感触が心地よく、落ちることへの抵抗が無い。


 そうして僕が眠るのに、一分とかからなかった。


 最後に朧げながら聴いたのは、一言。なんて言ったのかはわからないけど、言葉であることだけは分かった。





「––––––––––––好きです、良夜くん」

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