百十八話 せんにゅー③
「業務時間中はダメだけど、終わったらいいそうで、また夜来てくれだそうです!」
「ありがとうございます、ではそうさせてもらいますね。あ、その時に色々お話聞かせてもらえますか?」
「は、はいっ!」
な、なんか百合漫画見てるみたいでむず痒いっ……
「では、オムライス、もう少々お待ちください!」
「なんとかなりそうだね」
ダメだと言われた場合のことを考えてなかったから、断られなくてよかった。
「ですね。で、その…………誰が可愛いと思いますか?」
あれぇ?またその話題に戻るの?おかしいなぁ……
「えーと…………」
「じーーっ……」
あ、これ逃げられないやつだ……どう答える?…………逃げられないなら、躱せばいい!
「し、白撫さんはどうなの?」
「わ、私ですか……?」
「そ、そうそう」
よし、これで……!
「えと、その……一ノ瀬君が、一番……か、かっこいいと、思います……」
「あっ……そっ、そう、ありがとう…………」
顔を真っ赤にしながら、白撫さんは俯き、上目遣いで答えた。
…………軽く死ねる。
「し、白撫さんも、似合うと思うよ……」
「は、はぃぃ……」
それから頼んだものが来るまで、一切の会話がなかった。
そりゃそうだ、お互い顔真っ赤だもの。
「お待たせ致しました、ご主人様、お嬢様!オムライスでーす!」
運ばれてきたのは、ただただシンプルなオムライス。で、あれか、ここからアレがあるのか、アレが。
「で、では、失礼しますね、お嬢様……」
「はい?」
メイドさんが、白撫さんのオムライスにケチャップで絵と文字を描いていく。ハートと『だいすき』という文字だった。それを見た白撫さんの顔は、再び赤くなる。
「は、はぅ」
…………待って、何かがおかしいっ!なんでメイドさんまで顔赤くしてんの?いや、それはいい。なんでよだれ垂らしてはぁはぁ言ってんの?いや怖い怖い怖い……
「それではお嬢様、一緒に美味しくなるおまじないをかけちゃいましょう!」
「お、おまじない……ですか?」
「はい!『おいしくなぁれ、もえもえきゅん♡』って、二人で!」
「な、なんですかそれ……」
あ、白撫さんちょっと引いて……っ!これが狙いか!
「メイドさん!」
「は、はいっ!」
僕は、彼女に向かって親指を立てた。グッ、と親指が返ってきた。表現が若干ホラーだけど。
「?……?」
白撫さんは蚊帳の外。
「それでは……」
「え?あ、え?」
「いきますよー?」
「あ、あの……」
戸惑う白撫さんを置いて、強引に進んでいく。
「せぇの!」
「おいしくなぁれ、もえもえきゅん♡」
「も、もえもえきゅん…………」
可愛すぎて血反吐吐くかと思った。




