思い出の夏
その後は特に何も問題が起こるということは無く、ただ日常が過ぎていった。
賀川ももうクラスに馴染んでいる様子なので、一息つけると思ったのだが、やはり絡んできた。しかし、その事に慣れたのか、特に嫌だと思わなくなった。
慣れって怖い。
...そんなある夏の日のことだった。
「夏休みどこかでデートしようか?」
昼休み中に、そんな男子からは呪いのような目線を向けられる発言を賀川からされたのは。
「...何だいきなり?」
「いやだって夏だし。高校最後の夏だし。だったら恋人と夏の思い出作るくらい当然じゃない?」
「誰が恋人だ」
「真くんが恋人だ」
いや恋人って...。その域まで達してないだろ...。
そう思ったが口には出さなかった。これ以上クラスの連中から批判を買いたくない。
「黙ってるってことは否定はしないんだね?」
...黙ってる?
何のことだ?と思ったが、すぐに思い出し、何かしらすぐ返事をしなかった事を後悔した。
「沈黙は雄弁だよ?」
ニコッと笑顔を見せられた。
そんなこんなで、夏休みデートすることが決まってしまったのだ。
当日。
「...人多いな」
「当たり前だよ。夏休みだし。そうじゃなくても混む所だし」
現在、世界的に有名な某遊園地に来ていた。住んでる所からすると、結構遠出だった。もう、金が無い。
「じゃ、どんどん乗ろう!」
そんなことは気にせず、楽しむことが最優先らしい賀川は、俺の手をひいて駆け出して行った。
これ帰ったら筋肉痛だなと、俺は思うのだった。