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桜吹雪が吹く頃に  作者: 赤熊火色
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夜桜道

「ほー。結構大きい家だね〜。アパートに住んでるのかと思った」

「勝手に決めるな。俺が生まれた時からこの家にいたぞ」


 自宅前にて。俺は賀川へのお詫びということで家に連れてきたのだが...、


「ふむふむ。玄関の靴が乱れてる...。普段だらしない証拠だねぇ〜」

「何名探偵みたいに家ん中見てんだよ」

「おっと?このマウスピースは...。ボクサーかなんかやってたの?」

「どう見たらそっちのマウスピースに見えるんだよ。金管楽器に取り付ける方だぞそれ」


 家に入るなり中を物色しまくっていた。

 迷惑極まりない。


「よいしょっと」

「普通にくつろぐのな」

「だってこのソファー居心地いいんだもん」

「まだ入って五分と経ってないぞ」


 来て早々くつろぐとかぬらりひょんかこいつは。


「お腹空いた」

「唐突過ぎやしないか?」


 という訳で料理開始。食材を出すため冷蔵庫を開けると...。


「...何も無いな」

「何も無いね」

「...買い出し行ってくる」

「私も行く」

「勝手にしろ」


 そんでスーパーへ。

 ...こんなに自分は淡々としていただろうか。






 スーパーに到着。とりあえず今日の夕食に必要な食材と、明日の朝飯のパン、その他諸々をカゴに入れた。


「今日の夕食は何にするの?」


 と、賀川がまるで子供のような事を言ってきた。

 まあ、誰だって夕食くらいは気になるよな。


「サバの味噌煮」

「!!」


 今晩の献立を言うと、溢れんばかりの笑顔で反応してくれた。

 あと、至近距離で見ると可愛いと思ってしまう。


「お前味噌煮好きなの?」

「うん、大好物。よくお姉ちゃんが作ってくれた」


 姉。その言葉にちょっと反応する。


「お前、上に一人いたの?」


 すると賀川は少しむくれた様子で、


「そうだよ。いたよお姉ちゃん」


 そう返事を返した。






 会計を済ませ、スーパーを出ると、


「ねぇ、ちょっと寄りたい所があるんだけど」


 と、賀川が言ってきた。


「どこに?」


 そう質問すると、


「来れば分かるよ」


 と返してくれた。






「ここは...」

「綺麗でしょ?」


 やって来たのは地元で有名なスポット、『桜道』と呼ばれてる場所だった。その名の通り、桜の並木道のことだ。

 しかも、現在時刻午後七時。桜が夜桜に変わっていて、素直に綺麗だなと思った。


「ここで出会ったんだよ」

「...会ってないだろ」

「誰、とは言ってないじゃん」


 しまった墓穴を掘った。


「ねぇ、本当は覚えているんでしょ?()()のこと」

「...覚えてない」

「逃げても意味無いと思うけど」

「...仮にそうだとしても、人には言えない事情ってものがあるだろ」


 そう、まだ言えないのだ。

 それに対し賀川は、呆れた顔をしながら、どこか少し嬉しそうに、


「分かった。帰ってご飯にしよう?」


 そう言って、歩き出して行った。

 俺もその後に続いて行きながら、先程の賀川の言葉を思い出した。


「逃げても意味無いと思うけど」


 そうだと思う。けど逃げ続けたいとも思う。だから賀川千春とは、あまり関わりたくないなと思った。






 真君の家にて。

 私は夕食の支度をする真君を見ながら、確信していた。やっぱり真君は私とお姉ちゃんの事を知っている。忘れたなんて言っている理由も大体見当がつく。

 だからこれからも、何度知らない人扱いをされても、関わろうと思った。

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