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桜吹雪が吹く頃に  作者: 赤熊火色
3/16

そしてこうなる

「で?話とは?」


 加月の自室にて、俺は今日あった出来事を教えていた。

 加月はよく俺の愚痴を聞いてくれた仲だ。そして、ちょっとしたアドバイス的なことも言ってくれる。だからこういうことがあったらいつも話すのだ。


「あははっ!!そんな事があったんだ!!おもしれえ!!」

「笑い事じゃねーんだが」


 加月は大笑いしていた。なんか久々にその反応を見た気がする。そしてむせていた。


「大丈夫か?」

「ゲホッ!ゴホッ!...うん落ち着いた。でもその子がホントに真の彼女だとしたら、それはそれで失礼だと思うんだが」

「...まぁ、確かに。けど俺はそいつのことホントに知らないんだ」

「お前が忘れているだけだと思うんだが」

「身に覚えがないね」

「薄情なやつだな〜」


 と、そんなことを話し、加月の家を後にした。

 あ、アドバイス貰うの忘れた。

 このことに気がついたのは、寝る前だった。








 翌日。


「皆さん。人という生物は話し合うことで問題を解決するというものだと思うのですが」

「俺に人預けといてそれはないんじゃないか?」


 俺はクラスの連中に詰め寄られてた。

 昨日俺が早々に帰ってしまったため、聞けなかった事を聞こうとしたのだろう。

 ここまでは想定の範囲内だった。

 しかし予想外だったのが昨日上風に賀川を預けてたため、賀川がその事を利用し、もう収拾がつかないくらいまでに悪いようにその事が広められていた。


「な、なあ。話だけでも聞いてくれないか?」

「聞かなくても分かる。お前が外道な人であるということは」

「上風〜!?あんな交渉しといてそれはないんじゃないか?」

「すまんな。生徒会長の責任なもんなんでな。生徒を、この学校をより良くするためなんだ」

「お前が言うと悪寒がするんだが」


 そんな会話を聞きもせず、さっきから外野がうるさい。

 少し耳をすませば、「あいつあんな感じだったっけ?」「いや、元からだろ」「前からあいつ気に食わねーというかなんというか」「最低だね」という会話が聞こえる。

 ...なんでほとんど話したことのない奴らにこんなに言われなきゃならないんだ。

 あとで覚えてろよ...。

 と、散々な言われような俺に、賀川がニヤニヤとこちらを見ていた。


「...なんだよ賀川。何ニヤニヤしてんだよ」

「いやー、なんかこうして見てると懐かしいなーって」


 ...懐かしい?会ったことの無いのに彼氏だの色々と変なやつだな。


「ねぇ真君。そろそろ思い出して欲しいんだけど」

「だから俺は彼氏だったという記憶はねーんだよ。賀川は昨日来た頭がおかしいとしか言えない転校生、ということしか認識してない」


 それを聞いた賀川は、


「...ホントに覚えてないの?」


 と、泣きそうな顔をしてきた。

 や、やめてくれその顔をするのは...。俺が悪人みたいになってくるだろ...。


「...すまない。本当に覚えてない」


 それを聞いた瞬間、クラスでブーイングが起こった。







 その日の放課後。クラスの連中に社会的に抹殺された俺は、賀川の事を思い出そうと奮闘していた。

 あれだけ言われると、会ったことがあるんじゃないかという気がしてきたのだ。

 なので、思い出そうと腐りかけの脳にムチ打って考えいたのだが...。


 ...やっぱり思い出せん。


「で、そろそろ出てきたらどうだ?」

「ありゃバレてたか」


 電柱の影から賀川が出てきた。


「すまんな、俺ホントにお前の事が思い出せない。」

「ううん、大丈夫。私の方こそごめんね。迷惑だったよね」


 あれ?こいつ謝ってんの?俺に対して謝ってんの?謝ることをしないと思ってたんだが。


「?どうしたの? 」

「あ、あぁいやその、悪い方は俺なのになんで謝るんだって思って」


 俺にだって良心はある。なので、こいつが謝ると良心が痛むのだ。


「だから...その...、お詫びかなんかができたらなぁ、と思って」


 いやまあ、ぶっちゃけぼっちとはいえ、クラスの連中に社会的に抹殺されっぱなしというのもあれだからなんだけど。


「...お詫びか〜...」

「お、おい。お詫びっても金かかるものは無しな?そんな金持ってない...」

「大丈夫だよ。お金がかかるものは言わないよ」


 しかしこの時、賀川がニヤっとしていることに気づいた。嫌な予感がする。

 そもそも金のかからないお詫びって何だ?お詫びということは願いを叶えると言ってもいい。となると、こいつが望む願いって言ったら...。


「真君の家に一晩泊まらせて?」


 ほらこんな感じに彼氏になってとかそういう、


「今なんつった?」


 聞き間違いだろうか?いや流石に泊まらせてなんてことは、


「一晩泊まらせて」

「誰の家に?」

「真君の家に」

「無理だろ」


 そもそもウチには母ちゃんがい...。

 と、言おうとして気づく。

 今母ちゃんは出張で二、三日戻らないことに。

 ちなみにウチの家は母子家庭。つまり母がいないと誰も家にいないことになる。


「泊まらせてくれる?」


 と、期待を込めた笑顔で賀川が問い掛けてきた。

 ...これ後でみんなにしばかれないか心配だな...。

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