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桜吹雪が吹く頃に  作者: 赤熊火色
2/16

逃げ行為

 一瞬の沈黙。そしてざわめき始め、女子からは後で話を聞こうという好奇の視線を、男子からは恨みや嫉妬の視線を、教師からは、お前リア充だったのかという視線をそれぞれ受けていた。

 いや待ってくれ!俺この人と面識無い!


「な、なぁあんた。俺あんたと会ったことあったか?」


 俺は生まれてこの方一度も転校なんてして無かったはずだからこの話はおかしい。


「私はあんたって名前じゃないよ。千春だよ千春。ね?真君?」


 いきなり下の名前で言われたので、クラスの連中がまたざわめき始める。

 勘弁してくれ。


「いや俺はあんたと面識無いぞ。人違いじゃないのか?」

「ううん。私は恋人の名前なんて間違えない。あなたは五十嵐真。そうでしょ?真君」


 もう、周りの視線が怖いからやめてくれ。


「いやだから」

「二人とも、再会が嬉しくてじゃれあってるのは構わんが、それは放課後にやってくれ」

「はーい。せんせー分かりました〜」

「おいコラ、まだ話は...」


 俺の言葉を無視し、賀川は自分の席に戻って行った。

 ...何なんだ一体...?



 今日ほど午前中に学校が終わって良かったと思える日は無い。

 あの賀川とか言う奴。パッと見可愛い子だが、正直頭が狂ってるとしか思えない。

 おそらく学校が終わったら色んな奴らが俺の所に集まるのだろう。賀川含め。

 あいつ絶対勘違いするような補足入れてくるだろ。終わったらすぐ家に帰ることが妥当だ。お家万歳。

 と、そんな事を考えているうちにキンコンカンコンとチャイムが鳴った。

 よし帰ろう、と教室から出ようとすると、


「あ、待ってよ真君!」


 ...俺は無視して足を止めず帰ることにした。


「ねぇ、待ってよ!!」


 賀川が叫んでくる。

 もう知るか。呼ばれてるのに返事をしないのも大概だが、先に変な事を言ってきたのは向こうからだ。最低とか言われてもこの際いい。

 かつて先人達は言った。怪しい人には関わるな、と。俺はそれを実行するまでだ。

 と、足早に学校から出ようとすると、


「真君!!」


 ガシッと腕を掴まれた。


「おおおい!?何しとんじゃお前は!?」

「久々の再会だっていうのになんで逃げるの!?」

「いやだから俺はお前の事を知らないって言ってんだろ!!」

「私はお前って名前じゃないよ!!前みたいに千春って呼んでよー!!」


 ダメだこいつ人の話を聞いてない!!はやく何とかしないとそろそろ俺の堪忍袋の緒が切れそうだ!!

 と、昇降口の所にありがたい存在の奴がいることに気づく。


「おおい!!上風ー!!」

「おぉーどうしたリア充」

「頼むー!こいつ取り押さえてくれー!!」

「ちょ!?どういう事真君!?」

「見返りは?」

「ジュース二本奢る!!」

「それだけ?」

「こいつと接点ができる」

「引き受けたああああ!!」


 たったこれだけの会話で交渉成立できた。

 言葉って便利。


「あちょ、上風君!?」


 俺が言った通り、上風が賀川の腕を掴んだ。


「すいません賀川さん。でも友達の頼みと条件の良さとでしばらく俺に掴まれててください!」


 ...傍から見たら絵面的にアウトだなこれ。まぁでもありがたいことには変わりない。


「助かったぜ上風!!そのまま俺の姿が見えなくなるまで掴んどいてくれ!!」

「了解だ真!!...ハァハァ、意外と賀川さん力あるな...」

「荒い息吐かないでよ上風君!!」


 ...なんかやりとりが聞こえるが、とりあえず聞こえないふりをして、俺は全速力で賀川から逃げた。







 賀川から逃げた俺は、そのまま自宅へ...、ではなく、現在自宅警備員の仕事に就いている俺の友人の元へ向かっていた。

 ドアの前に立ち、インターホンを鳴らす。そして、1、2分ほど待つと、まぁだらしなく伸びきった髪がトレードマークとなっているナマケモノが出てきた。


「お前インターホン鳴ったらすぐ出るということを心構えた方がいいぞ」

「出て早々に説教はやめてくれ」


 そう言って、眠いのかあくびをしたナマケモノ、大夜加月(おおやかづき)は家に上げてくれた。

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