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説話91 元魔将軍は行商人と会う

「スルトさまあ! 言っておきますけどお、今度いきなり獄炎魔法をぶっ放したらウチぃ、断固として戦うからねえっ!」


「……ごめん」


「ウチが抑えたから大事にはならなかったけどお、あれが子供たちなら死んでるよぉ? わかってんのお?」


「はい。返す言葉もありません……」


「まったくもう。ポーションを作るのはいいですけどお、周りが見えなくなるのは自分でどうにかしてえ。

 もし子供たちになんかあったらウチっ、超絶本気でスルトさまとあれ以来ぶりにやり合うからそのつもりでえ」


「……以後、気を付けます」


「そうしてえ。じゃあ、行商人さんのことは任せたからね。

 ウチは子供たちの所へ行くわ」


「よろしく、セクメト。ありがとうね」


 すごくきれいな顔した少年がさきの女性に散々と怒られたが、エリックたちはそれどころじゃなかった。



 案内されたのは窓から火が噴いた建物にある応接間という部屋。


 見たことのない素材で作ったソファーに、これまた飲んだこともない香りのいいお茶が出された。



 エリックとベアトリスは幼馴染で大人になって結婚した二人は、行商人であったベアトリスの父親の後を継いだ。二人が行商人を始めてからすでに十五年。


 子供は出来なかったけど、幼い頃に森でピクシーのユナを救助して以来、ユナが夫婦の寂しさを慰めてきた。


 儲けは多くないとは言え、エリックとベアトリスも商人であり、カラオス王国で有名な特産品とかは一通り食べてきたが、これほどうまいお茶は飲んだことがなかった。



「ごめんね? みっともないところを見せちゃって」


「あ、いや。お気遣いなく」


 少年が謝ってきたのでエリックも慌てて頭をさげた。



「それでこちらになんの用かな?」


「はい。実は今までここを通ってきたのですが、このような素晴らしい建築物がなかったんですよ。

 水の補給もお願いしたいし、できればなにか御商売をさせてもらえるかなと寄らせてもらいました」


「そう、それは助かったよ。

 ボクたちはちょうど小麦粉や砂糖などの食料品を切らしちゃって、どうやって補充しようかなと思ってたんだ。

 もしあるのなら売ってもらえると助かるのよね」


「そうですか。私どもも零細行商人でして、お求めになる食料品などの日用品ならありますが、高価な嗜好品は取り扱っておりませんのでご了承ください」


「そういうはいらないよ。

 食料品はどのくらい売ってもらえるかな?」


「少々お待ちください」


 少年に聞かれたエリックは目録を持ちだして、今のある食料品の数量と価格に目を通した。



「食料品でしたらそうですね、小麦粉が……」


「うん、細かい数字はいいからね。全部でいくらになるのかな?」


「そ、そうですか。それでしたらえっと……

 おおよそですけど、白金貨五枚分の商品はありますが」


「そう。じゃあ、これで」


 少年はエリックから値段を聞くとおもむろに宙を掴むようにして、それからカラオス王国の貨幣で白金貨五枚を豪華な机の上に置いた。



「全部ボクがもらうよ」


 エリックとベアトリスは口を開けてなにも言えないまま、置かれた白金貨をずっと見ているだけ。


 ピクシーのユナだけはガクブルと震えながら、ベアトリスの髪の中から少年を覗いていた。



お疲れさまでした。

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