表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

94/188

説話89 元魔将軍は自重する

「よるはねること、ねないのはダメ!」

「ダメなの!」


「……はーい」


 結局ミールとエリアスが代表となって、子供たちから徹夜作業禁止令が容赦なく出されたので、ボクも仕方なくそれに従うことになった。トホホ


 まあ、弱火での煮詰め作業も子供たちにとって、将来は覚える必要があるからこれはこれでいいとしようか……


 本当はカキカキにマゼマゼをしたいのになあ……



 それはそうと、出来上がった釜二つ分の薬液に魔法を込めてポーションに仕上げる作業だが、まだ子供たちに魔法を教えていないのでこれはボクがするよ。


 ポーションに込める魔力は操作が大事なので、学校で魔法のことをちゃんと学んでから、子供たちにもやらせてあげようと思うんだ。



 そういうわけでさっそくだが、薬液をビンに詰めてから――


 うん、ビンがないね。


 そりゃないよね、買ってないし作ってないから。パペッポ村では道具屋さんが用意してくれた。



 それにこの頃なんとなく思っているけどさ、イザベラはなんでもあらそうですのって流してくれるし、セクメトも魔族だからボクのすることを気にしないけど、フィーリあたりがね、すごい目で見てくるのよね。


 これはちょっとだけ自重ってやつをしないといけないかもね。



 自重ってさあ、自分の重さかと思ってたけど、それを言ったら戦士のカタヤマに笑われたよ。


 カタヤマはチートという異能は周りから目を付けられやすいって。だからなるべく人の前で使わない方がいいと教えてくれた。


 これからそういった目立つ作業は子供たちが寝てからにしよう。それなら気付かずに済むね。




 今は深夜、子供たちは就寝しているね。よし、今から作業場に行こう。


「どこ行くのさあ、スルトさま……」


 居間のソファーはすっかりセクメトのベッドになったようだけどダメだよ。寝る時はちゃんと自分の部屋で寝なくちゃ。


 あ、でもセクメトってアンデッドだから寝なくてもいいか。


 ――じゃあ、好きにして。



「ちょっと会社でビンを作って来る」


「いってらっしゃいぃ。朝には帰ってきたほうがいいよお」


 ボクに注意してからセクメトはまたソファーの上でだらしなく手足を伸ばす。まあ、ここはセクメトのいう通りにするか。


 朝になったら寮に帰ってこよう。




 ――すっかり朝だね。


 ボクは地中を探って、ビンの材料を手に入れてから大量の瓶を生産したのよね。時間がまだありそうだから、そのまま煮詰めの作業を終わらせて、倉庫の半分以上が埋まるほどポーションを作ったんだ。


 ここは一度、寮に戻って顔を出しておくか。



「やあ、みんな。おはよう」


「おはようございます!」


 うんうん。今日も爽やかな朝で子供たちは元気いっぱいだよ。


 うん? どしたのかな? ミールとセクメトがボクになにか言いたい様子を見せてるけど、ちゃんと聞いてあげたほうがいいよね。



「なに?」


「……」


「いや、別に気付いてないのならいいよお。今日のご飯はアールバッツが作ったけど、食べるぅ?」


「そうだね、今日はなんだか気分がいいので食べようかな」


 よし、バレてないね。これが自重ってやつだよ。こうしてこっそりとやればボクは好きなポーション作りに打ち込めるんだ。


 やったね!



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「ねえ、フィーリ」


「なに? オリアナ」


 体の大きいベア族の少女がフィーリに声をかける。


 彼女も元奴隷でフィーリと同じ、奴隷商人によって王国へ身売りされようと運送されてた。



「スルトさんはなんだかすごく機嫌がいいんだけど、どうしたのかな?」


「オリアナ、知らない顔してて。

 スルトさまはまたすごいことしたのに、私たちが気付いてないと思ってるのよ。だからそんな嬉しい顔してるの」


「いまさらなんだけどな。

 二日も帰ってきてないし、見に行ったら一言もしゃべらないですごい量のポーションを作ってるから、もうとっくにみんなにバレてるのにね」


「そこがスルトさまの可愛いところよ、わたしたちが知ってることは内緒にしといてあげてね。

 みんなにもそう伝えて」


「わかったわ、そうする」


 食卓についてフンフンと上機嫌で鼻歌を口ずさむスルトを、少女の二人は見守るような温かい目を向けている。



お疲れさまでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ