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説話87 不死者は子供と仲良くなる

 ボクが暗黒の森林で魔族と会ってから数日後、早朝に薬草の畑へ行くと薬草がみっちりと生えてきたので、薬草は収穫することにした。


「はーいみんな、こっちを見てね」


 ボクは騒がしく朝食を取りながらはしゃぐ子供たちがいる食堂の中で声を張り上げて、子供たちの注意力をこっちのほうに向かわせた。



 静かになった食堂でイザベラだけは黙々と食事を取り続けてるけど、それはしょうがないね。


 今のイザベラはボクから言われた教科書というものを、国語と数学の二科目を懸命に考えながらまとめているんだ。それでほかの用事を頼まないようにしてる。教科書ができたらボクが創造魔法で人数分だけ複製すればいい。


 でもね、教科書を書きあげたらイザベラを森のダンジョンに連れていて、太り出した腹回りを痩せさせようと思うのよね。



「今日は畑で薬草を収穫しようと思うんだ。いいかな? 薬草は根から掘り起こして、新しい苗を植えたら次の薬草に取りかかるんだよ。

 畑に行ったらボクがちゃんーとお手本を見せるから後でよく見てね」


「はーい」


 うんうん、ミールが元気よく手をあげたね。


 そう、ボクは子供たちに伝えているんだ。質問のあるときは手を上げるようにとね。


 ミールは賢いねえ、言いつけを忘れないで守ってるのよね。



「なにかな、ミール」


「スルトお兄ちゃんはじぶんのして。こっちに来ちゃダメ」

「ダメなの」


 ――うん、ミールからボク自身の畑以外の収穫禁止令が出されました。しかもエリアスの後押し付きで。


 こういう時に目から汗がにじみ出そうになるのはなぜでしょうか。うーん、わかんないや。


 ――まあ、ミールの禁止令はしっかり守ろうと思います。




「行ってきまーす! またあとでね、リンちゃん、ビンちゃん!」


『ガシャン!』


 ずっと疑問に思ってたけど、なぜ寮の玄関口に二体のリビングアーマーがいるのだろうか。


 しかも子供たちはが親しそうに手を振って挨拶すると、リビングアーマーも右手をあげて、子供たちに返事するのよね。



 あれだね、セクメトが面倒くさがって仕事をリビングアーマーに押し付けたんだな。先も居間のソファーから起き上がらないで挨拶だけの見送りだった。


 これはちょっと罰を考えないといけない。そうだね、対太陽防御装備を外させてから太陽の下で一時間焼却なんてのはどうかな。



『おお、スルトさまではないか。お久しゅうですなあ。みなさんはどちらに?』


 うん。ざっくばらんに話してくるのは5体のデュラハンだね。



「デュー3号さん、おはようございまーす!」


『おお、みんなも早朝から元気でよろしい。おはようさん』


 びっくりだよボク。


 子供たちがデュラハンと普通に挨拶を交わしてるよ? ねえみんな、デュラハンは左手で首をかかえているのよね、怖くないの?


 その前に番号で名前を付けてるわけ? どうやって見分けるの?


 ボクが忙しく首を動かすからフィーリのほうから説明してくれたんだ。



「セクメトさんからリビングアーマーさんとデュラハンさんを紹介してもらったんです。わたしたちを守ってくれるから怖くはないって。

 一緒に首投げの遊びをしたらいい人ばかりだってわかって、今はもうみんなが懐いています」


「首投げの遊びってなにかな?」


「デュラハンさんの首を誰が一番遠くへ投げれるという遊びなんです。

 あとは首をデュラハンさんが隠して、わたしたちが首を探し出すとかですね」


「そんな遊びがあるんだね」


「はい。デュー5号さんは無口ですけど、すっごく優しくしてくれてますよ」


「それは気になったけど、きみたちは見分けられるんだ?」


「はい。たとえばデュー5号さんですが、胸の鎧にちょっとした凹みがありますからすぐにわかりますよ」


 うーん……


 フィーリの指した方向に目をこらすけどさあ、全然わかんないねえ。


 どのデュラハンも見た目が同じように見えるけどなあ、魔力も同じくらいだし。まあ、この子たちが懐いているならいいか。



『ささ、小さい子は我らに乗るが良い。そこまで送ってやろうぞ』


 わらわらとミールやエリアスたちが小さい子はデュラハンたちに群がっていくんだね。


 とにかく、魔族と仲良くするのはボクもいいことだと思うよ。


 でもね、セクメト。


 部下に仕事を丸投げしてるきみはこれで太陽の下で一時間焼却の刑が確定したからね。



お疲れさまでした。

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