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説話86 元魔将軍は森の魔族と宴会する

 今はもうね、暗黒の森林の魔族さんたちと仲良くお話するようになったんだ。


 お酒と料理の力はすごいね、ためこんでおいてよかったよ。昔の自分を褒めてあげたいね。



「スルトさまは食べないの?」


「いいよ。きみたちが食べて」


 気遣うアルラウネがボクにワイルドボアの串焼きを持ってきたが、笑顔で断っておいた。それにしても気になることがあるのよねえ、なんでトロールとかオーガとか武装しているのだろう。


 聞いてみようっと。



「ねえ、その装備は人間から奪ったの?」


 ボクに聞かれたオーガは慌てて焦った顔で激しく頭を振った。



「まさか。ワレら暗黒の森林に住む魔族は人間が襲ってこない限り、手は出さないと決めってるんだ。

 規律を破ったのはあのワイバーン、あいつは強かったからワレらも諫められなかった」


「じゃあ、その装備は自分たちで作ったの?」


「そんなことワレらにはできない。これはダンジョンから取ってきたんだ」


「へー、そうなの」


 それはいいことを聞いちゃったよ。


 ダンジョンがあるなら、子供たちを鍛えるのにちょうどいいと思うんだ。今度オーガに案内してもらおう。



「じゃあ、きみたちは食事を楽しんでよ、今日は挨拶に来ただけなんだ。

 隣に住む隣人だけどさあ、今後もよろしくねっ!」


「はっはーっ!」


 魔族全員がボクに平伏しちゃってるよ。こういうときは手を振って早くこの場を去ったほうがいいとボクは知っている。


 そうそう、アダムスにだけお話があったんだ。



「アダムス」


『ハムハム。こりゃうまいぞ……

 なんじゃい? わしになんぞ用か?』


 あーあ、口一杯に食べ物を頬張ってからに。毛が脂ぎってテカテカと光ってるよ。



「十日後くらいにこっちへ来てよ。子供たちに紹介したいからさ。

 それと歴史と神学の教科書もちゃんと書いてね」


『わかっとる。書いてから持って行くわい……

 ハムハム。これもうまいのう』


 アダムスは食べることに夢中になってるから、放っておいて帰ろうか。



 歩いていると後ろから魔族たちの声が聞こえてきた。



「それ、うちが食べるんだよ。手を放せ!」


『先着順じゃあほ! 先取ったもんの勝ちじゃ!』


 食べ物の争奪戦に突入したようだね。今度来たときにまた分けてあげよう。




「スルトお兄ちゃん。たべてたべて」


「たべてなの」


 うーん、ミールとエリアスがクッキーと言う名の消し炭をボクの口に持ってきた。期待に輝く四つの瞳がボクを見つめているんだ。



 ボクはね、食べないだけであってけして食べられないというわけじゃない。


 もうはるか遠い昔だから忘れたけどさあ、食べることに飽きたボクは、それ以来食べ物をたべてないのよねえ。


 でもね、この子らが懸命に作ったものを、異空間に入れるというのはなぜか心がチクっとするんだよね。


 よしっ、こういうときは考えるよりも行動だね。


 食べてみるか? モグモグ……



「ミールつくったの。おいしい?」


「おいしいなの?」


 砂入りの消し炭が美味しいかどうかと聞かれれば、ボクも返事に困ってしまうんだよね。


 そんなものはボクじゃなくても普通は食べないと思うんだ。でもね、これはこの子たちが真心を込めて作ってくれたんだ。


 これからは子供たちが作ったものなら、ちゃんと食べてあげようかな。



「うん、美味しいよ。二人ともお料理が上手だね」


 頭を撫でてあげるとミールとエリアスがとても喜んでいる。なぜか後ろにいるイザベラとフィーリたち女の子は微笑んでくれるんだよね。


 なんでだろうね。



お疲れさまでした。

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