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説話81 元魔将軍は子供たちに聞く

 シーンと静まり返る中、最初に声を発したのはイザベラだった。


「まあ、ワタクシも勇者様になれるのですね」


「それは無理だからね」


 イザベラは勇者にはなれないよ? こんなおバカな勇者、他人はどう思うであろうとボクが嫌だね。


 きみには子供たちに教えるための教師ってやつになってもらうつもりなんだ。



「ウチもウチも! ウチも勇者になるぅ」


「セクメトもできないからね」


 勇者は聖気を帯びる聖なる戦士だよ。アンデッドのセクメトは暗黒魔気しか出ないよ?


 聖気と対極にあるセクメトが勇者にはなれないし、こんなイタい子を勇者にする気もならないね。


 セクメトには寮を管理する寮母という住まいのお偉いさんになってもらうんだ。セクメトなら敵からの襲撃を簡単に撃退することができるからね。



「あのう、ぼくたちは勇者になってなにするんでしょうか?

 やっぱり魔王という恐ろしい化け物と戦わされるんですか?」


 アールバッツがおずおずとボクに聞いてきた。


 ここはしっかりと答えてあげないとね。


 死地へ送り込まれる使い捨ての道具と思われては困るんだ。たとえ相手が魔王様でも、ボクはここにいる子供たちを死なせるために育てたいなんて思わないね。



「アールバッツ。ボクとここに辿りつくまできみは様々な街でなにを見てきたんだ?」


「……えっと……ご飯を食べられない貧しい人たち。居場所を失った子供とお年寄り。

 それと人からものを奪うしか考えない怖い大人……かな?」


「フィーリ、きみは奴隷という身分になる前に生きててなにを見てきたんだ?」


 ボクから問いかけられたフィーリはしっかりとした口調で自分の意見を述べる。



「いくら頑張って働いても搾取されるだけの日々、わたしたちには明日がないんです。

 豊作になってもそれは税が上がるだけで、わたしたちの生活が豊かになることは絶対にないです」


「それはおかしいと思わないか?」


「おかしいですけど、わたしたちではどうしようもありません。決めるのは領主様と国ですから」


「なんとかしようとは思わないか?」


「なんとかしようにもなにもできません。

 村長さんが訴え出ても領主様と国は兵を差し向けてくるだけで……」


 泣き出しそうなフィーリにボクは頭を優しく撫でてあげた。


 いまこの子に必要な慰めはこれだと、イザベラが時々夜に泣いたときにボクが経験で知ったことさ。



「勇者とは勇気のある者。

 でも、その勇気は魔王に立ち向かうためだけじゃないんだ!」


 さあ、ここからは歴代の勇者たちに聞かされたことをダイジェストというやつで伝えていくよ。



お疲れさまでした。

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