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説話79 宮廷魔法総長は国王を笑う

 カラオス王国の王都カラオベルクの外に来ているよ。


 ボクの飛空魔法はねえ、魔力に応じて速度が調整できるんだ。


 それはいいとして、ちゃっちゃとやって帰ろう。朝食の用意をちゃんとしておかないとイザベラがうるさいのよね。あのペット、食事に関わると人が変わるから。


 手を大地に当てる。


 ――ふーん、こういう流れなのか。じゃあ、暗黒の森林の方向に向けて流れを変えてと。


 よし、終わり。



 三分の一は残してあげたからいいよね。


 魔力の操作が得意なボクにとってこんなの片手間だよ。でもこういうふうに流れをコロコロと変えちゃうと、世界に流れる魔力の地脈が乱れちゃうから普通はやらないけどさ。


 今回は薬草を植えるためならしょうがないねっ!


 ――さあ、帰ろう。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「陛下。ムッチャクチャ陛下っ!」


「これこれ、ウィービル宮廷魔法総長。

 わしはヌッジャウチャ四世じゃ、ムチャクチャじゃないぞ。何度言えばそなたは直るんだ」


「もうヌッジャウチャでもムチャクチャでもなんでもいいですわい。

 大変な時にそんな下らぬことに拘るな、このカス陛下」


「……すぐにでもそなたの首を文字通り切り落としてやりたくてムカムカしておるけどな、そなたの口悪さは幼い頃から変わらんから、まあいい。

 して、大変とは何事じゃ」


「王都に流れる魔力の流れが昨夜、いきなり弱まったわい。

 これは大変なことになりましたぞ」


「ふむ……その魔力の流れが弱まって、それで我が王国になんの影響が出るんじゃ?」


「……だからあ、あれほど魔法や魔力について勉強しろと言ってやったのにこのアンポンタン陛下が!

 女と酒と賭け事にばかりうつつ抜かすから、そんな脳タリンの腐れ国王になるんだわいっ!」


「……わし、今すぐそなたを殺しても良いか?」


「おお、殺せ殺せ。お前らのくだらぬ勇者の賭け事がこれからは長引くと思えばわしもせいぜいしたわい。

 異世界からとは言え、人が死地に送り込まれることを見ずに済むと思うと気がこう、ものすごく軽うなったわい。

 さあ、とっとと殺してくれい」


「……なにぃ? 長引くとはなんだウィービル!」


「王都に流れる魔力の流れが弱まったんじゃ。呼ばれしのオーブというクソ石に魔力がたまるのが遅くなるんじゃ。

 そうさのう、最低は十年かかるじゃないかのう。あー、おもしろっ」


「つまらん皮肉はやめろ。対策は打てぬかっ!」


「人ごときにそんなことができるわけない。

 新たな魔力の地脈を見つけたとしても、クソ石の移送や魔法陣の再設置を考えるとやはり十年はかかるよのう。

 あーははは!」


「このクソジジイいい……なんとかせぬか!」


「バーカバーカ、なんとかできるわけがない。

 まっ、気長に待つことのじゃな、わしは行くわい。あー楽し、あーははは!」


「これ待たんかウィービル、はようなんとかせい!

 わし、貴族どもから責められるぞ!」


 年老いた宮廷魔法総長は本当に嬉しそうに笑いながら、国王の焦る言葉を無視して早足でこの場から立ち去った。



お疲れさまでした。

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