説話78 元魔将軍は薬草を考える
薬草はこの世界にどこにでも生えてある植物、それこそ草原や森林の中に行けば簡単に採取できるものさ。
ただ、摘んでしまえば無くなるのはどの植物でも同じで、もちろん薬草もこの例外ではない。
そこでボクは薬草を植えることについて考えた。
薬草を栽培するのに二つの条件は必要、それが土壌と魔力さ。
土壌については勇者たちから得た知識で、ボクはすでにその材料を手に入れることが可能と思う。暗黒の森林にある分厚い落ち葉の層、これを使って薬草の畑になる場所の土壌改良するつもりなんだ。
その次は魔力なんだが、この世界の魔力は地下を大河のようにいろんな場所に通っていて、そこから染み出た魔力が植物に影響を与えるので、地下に大きな流れがあれば薬草は栽培しやすいんだ。
この一帯にも魔力の流れはあるけどそれは小さく、薬草の栽培に適すほどではないのよね。
だからね、ボクは魔力の流れを変えてみようと決めた。
前に行ったカラオス王国の王都の地下に流れている大きな流れをこっちに向けて変えるつもり。
薬草栽培に必要だからというのもあるけど、一番の狙いは次期召喚勇者の時期を遅らせること。すくなくとも十年は遅延させるつもり。それ以上になると王国のほうが呼ばれしのオーブを、魔力の流れがある違う場所へ移すかもしれないからね。
ボクは十年以内に勇者たちを育て上げる。次の転移勇者が呼ばれる前に決着をつけたいんだ。
これで今からすべき準備作業については考えたから、あとは着実に実行していくだけ。
みんなが住む寮は暗黒の森林に一番近い場所にするつもりで、暗黒の森林に住む魔族たちと話し合いさえつけてしまえば、そこが一番安全な避難所になれるはずと思うんだ。
寮の前にあるのが会社という薬草を作る場所。
ここはポーション作りの作業場と製品を貯蔵する倉庫を建てるつもり。万が一のときはここが司令部兼野戦病院という勇者たちに教えてもらった建築物にするつもりなんだよね。
会社からさらに手前には学校という子供が教育を受ける場所にする。
会社側には運動場という身体を動かす広々とした空き地にして、学校の建築物から見て、運動場の向こう側にプールという水遊び場を作る予定。もしものときは、学校の建物が攻め込んでくる敵を迎え撃つ建物に早変わり。
プールに溜めた水はなにかと使えるはずさ。
戦国時代という勇者たちの歴史に、水の手を攻めるのは戦法の一つと賢者のアシカガが教えてくれたんだ。
水って、なにかと大事なんだよね。
とまあ、色々と考えたけどそこまでは追い込まれることはないと思う。
イザベラが教えてくれた公爵家という集団が抱える騎士団の三つや四つくらいはボクでなくても、セクメトだけでどうとでもなるんだ。でもね、勇者たちはよく備えあれば嬉しいっていうからね。
みんなに喜んでもらえるなら、ボクはいくらでも備えておくよ。
さてと。
みんなが寝てから飛空魔法でカラオス王国の王都へ行って、ちょっちょいのちょいで魔力の流れを変えて来ようかな。
お疲れさまでした。




