説話77 元魔将軍は建設を考える
『スルト殿たちが来られてから、森のヌシとか自称しておったワイバーンがいなくなってのう、わしらはせいぜいしたのじゃ。
いやー、それにしてもセクメト殿はお強いですな。あのワイバーンを倒せるだなんて』
「ありがとうね。妖精さんじゃなかったらあ、
お礼にぐんずほぐれつ乳繰り合って揉みしだいている楽しいことをしてあげたのにね、ざんねーん」
セクメトはアダムスを抱えて、わしゃわしゃとその毛をもてあそんでいる。
アダムスと話したけど彼は人間の歴史に詳しかったね。召喚勇者が現れた時期に男神が隠れた話もしてくれたんだ。だからアダムスにお願いすることにしたのさ。
「じゃあ、この森の魔族たちと会談する手筈を整えてもらうことと、教師になってもらうことをよろしくね」
『うむ、わしに任せろ、十日後にまたここに来るとよい。
この世でわしに知らぬことなどない、その子供の教育とやらに手を貸しても良いぞ』
「じゃあ、魔王軍の序列五位はだれ?」
『うううむ……か、カスカ…
カスカノツボウネイじゃ。その者が魔王軍の序列五位じゃ!』
「あははは、だれだよそれ。じゃあ、また来るね」
『うむ。酒をまた頼むぞ』
森の賢者アダムスはお酒で買収することができた。
その酒は魔王領にある森の猿たちが果実を発酵させたもので、森の猿たちはヴァナという黄色の細長い果物と交換してくれたんだ。
ボクとセクメトが戻ると子供たちが集まってきて、食事をねだってきた。なんだか勇者たちが言ってたテイマーという職業師になったみたいで、飢えてる子供たちはまさしく猛獣そのものだね。
子供の世話はイザベラとセクメトに任せて、ボクは今後のことを考えることにした。
最初はまず住まい。
これはボクの魔法による建築ができるから簡単だけど、問題なのはその規模だよね。
ボクが考える勇者候補は120人と1人、要するに勇者組、聖女組、賢者組に戦士組だね。一組の人数が30人で、その数なら強い合わせ技ができそう。指揮する最強勇者候補が一人でみんなを統率するんだ。
聖女組だけは女の子のみにしてる。今までの召喚勇者をみても、聖女は必ずお姉ちゃんたちが役割を担ってたからね。
その人数でいくと200人が住めるくらい建物を建てるつもり。
空き部屋はあった方がなにかと対応しやすいからね。10才以下の子供部屋とイザベラの部屋は二階におく。10才以上の子供部屋は一階にして、ボクとセクメトも部屋を一階で構える。
万が一何かあった時は対応しやすいもんね。
一階にはほかに応接室、居間、トイレにお風呂、物入部屋に調理場や食堂も一緒に作るよ。地下はね、雨の日に備えた訓練室兼避難室や倉庫を計画しているんだ。
みんなが住む寮はそれでいいのだが、今度は学校という教育を受ける場所と会社という仕事をする場所をいまは考えているのよね。
確かにボクにはお金となるものが一杯ある。
しかし、一方的にボクから供給し続けるのはよくないことを、イザベラの飼育過程でちゃんーと学んだのさ。そのためにボクも仕事するという姿勢を子供たちに見せてやらないといけないね。
そこでボクが思いついたというか、ボクが一番したいことをしようと思ったんだ。
そう、薬草を植えて、それでポーションを作ってからそれを売る。
その資金で子供たちを育てようと決心した。
やはりね、言葉による教育も大切だけど、見せての教育も大事だと思うよね。それにポーション作りは子供たちの魔法操作の訓練に使えるとボクは気付いたのさ。
お疲れさまでした。




