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説話70 元魔将軍は辺境で家を見つける

 暗黒の森林はとてつもなく大きい森であった。


 スルトは森の中に入ってみたいと思ったがイザベラが森を嫌な目で見てたので、森で襲われたことを思い出したかもしれないと考えたスルトは、森の外側を歩くことにした。



 広大な草原で歩いてるスルトたちは、暗黒の森林との境目でいくつかのボロボロの家を見つけたので、そこへ行って覗いてみることにした。


 こんな人っ子一人いなさそうな場所で、なんで家があるだろうと思ったからだ。


 それらの家は家と呼ぶにはあんまりにも貧相過ぎて、今にも崩れそうなものばかりである。



「あら、犬小屋にしては汚すぎますわね。でも、誰もいないから捨てられた家ですわね」


「そだね」


 イザベラの言葉にスルトは頷いた。



 イザベラは気が付いていないのかもしれないが、森の中からスルトたちを覗いている小さな魔力が100を超えてることに、スルトはすでに察知した。


 エルネストは辺りを見回してから、スルトに自分の見解を示す。



「あにさま。今でも使われている痕跡がありますよここ」


「そうだわ。それに先から森のほうから視線を感じるわね」


「よく気が付いたね。二人ともえらいよ」


 アグネーゼが森に目をやりつつスルトに話しかけてきた。


 そんなエルネストとアグネーゼにスルトは頭を撫でてあげて、二人とも気持ちよさそうに微笑んでいる。



「あら、ワタクシもちゃんと気付いていましたのよ。はい」


「え? なにが?」


 自分が言ったことをさも当たり前のように翻して、頭を下げてくるイザベラに、スルトは疑問を投げかけずにはいられなかった。



「ワタクシもちゃんとここは人が住んでいる家だと思いましたわ。

 だからスルトちゃんもワタクシを褒めるべきですのよ」


「はいはい」


 スルトはイザベラの頭を撫でながら思い出した。


 勇者のヨシタニはペットにも飼う順番で先住と後住というのがあるらしく、どうも先住したほうが嫉妬することがあるという。


 スルトはうんうんと頷き、勇者のヨシタニのペットについての知識に改めて敬服した。



 森からの視線が途絶えないまま、スルトたちは家を見回す。


 家の中に家具らしい家具がなく、草を敷き詰めたものがあるが、どうもそれがベッドのようだ。湿気が立ちこもていて、カビ臭い匂いが部屋の中を漂わせる。


 外には畑というには雑草のようなものしか植えていなく、ウサギの骨が焚火の跡の周りに散らばっていた。ここに住んでる者たちはロクな食べ物しか口にしていなかったようだ。



 家の前でミールは木材で削った粗末な積み木のようなものを発見して、それを手に取った。



「スルトお兄ちゃん、これおもちゃ? もらっていい?」


「そだね。ちゃんと聞いたほうがいいと思うよ?」


 荒削りの積み木を手にするミールに。スルトは笑みを見せてから答えた。



「それええ、エリアスのおお、とっちゃいやなのおお!」


 森から人間の小さな女の子が泣きながら、スルトたちのほうに向かって走ってきた。



お疲れさまでした。

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