説話69 元魔将軍は日記を書く
××月××日
聖女のユイナは日記を付けてたので、ボクも真似することにした。
今日は晴れで迷宮都市を出てから五日、アークドラゴンのことを思い出したので、人がいないここで放してあげた。イザベラはまたもや失神したけど、それはもうどうでもいい。
子供たちは光輝くアークドラゴンを見て大はしゃぎ、イザベラもペットの先輩だから見習ってほしいものよね。
アークドラゴンはボクに名前を付けてほしいと言ってきたから考え込んでしまったよ。
名前って意外と難しいよね。賢者のアツギがいつも略称していたことを思い出したので、アードラって付けたら喜んでくれたね。
力になるから必要なときは呼んでって言ってくれたけど、そんなのいらないって言ったら悲しそうな顔で泣いてたけど、そんなのいらないんだもん。
アードラが飛び去っても子供たちは大喜びしてた。イザベラを起こしてからみんなに食事を用意してあげた。
××月××日
今日は雨で子供たちは少々元気がない。歩きっぱなしで疲れてたのかもしれない。みんなが寝てる時に全員に身体強化を施してあげた。現時点で最大限まで引きあげたが、子供は成長するから大きくなったらまだまだあがるはずさ。
イザベラはもう無理だね。成長するのは腹回りばかりで見かねたボクは森の中へ魔物と戦わせたのさ。
最初は嫌がってたけど、子供たちの歓声で調子に乗っちゃって、そのうちに現れたアルラウネに悪戦苦闘した。
おバカなペットだね、本当。
××月××日
今日は晴れ、どこかの街についた。
冒険者ギルドにちょっと立ち寄った時に、カネヤマのいうテンプレってやつと遭遇したよ。イベントの発生でやったね。
勇者たちがいうヒャッハーさんという男たちがイザベラのお乳を触ろうとしたので、キレた彼女に吹っ飛ばされた。
空中浮遊って言うのかな、綺麗に飛んだね。
冒険者ギルドのギルド長が出てきたけど、ここのギルド長はエルフじゃなかった。
でもボクの名前が通達されてるみたいで、ヒャッハーさんたちをギルド長が凄い顔で指示して別室へ連れて行かれたみたい。
こういうときはなんていったっけ?
そうそう、戦士のササモトがよく言ってた言葉なんだけど、ナムーってやつだね。意味はわからないけどね。
××月××日
今日は曇り。武装したヒャッハーさんの集団がボクらに襲いかかってきたんだ。
イザベラがいうには盗賊って種族なんだけど、あれは人間だよね? 人間なのに盗賊って種族ってどういうことなの? まあ、どうでもいいけどね。
それでイザベラに倒してきてって言ったんだ。ペットはボクの言いつけを聞くと喜んで飛び出した。まるで勇者クスギが言った召喚獣だね。
そうそう、エルネストはとても賢いんだよ。
この頃は子供たちに魔法を教えているけど、獣人よりも人間とエルフのほうが適性あることは確かだよね。まあ、身体能力は獣人のほうが高いのは否めないけど。
エルネストは戦いが始まると、アールバッツ以外のみんなを連れてボクの後ろに隠れた。とっさにしてはとてもいい判断だよ。
そんなわけでボクはこの子供たちにそれぞれの適性に合わせて鍛えていこうかと思ってる。暇つぶしになるからね。
イザベラは実戦するだけでいいの。頑張れ召喚獣イザベラ。
××月××日
前に王都を寄ってきたが汚いし、臭いし、人混みで気分が悪い。
ヒャッハーさんのイベントも多発してイザベラが頑張った。王都の冒険者ギルド本部のエルフお姉さんはボクらに滞在してほしかったが断った。あんなところにいたらボクはキレちゃうね。
ただ収穫は一つだけあった。勇者を召喚するための重要なことが確認できたんだ。王都の地下に魔力の大きな流れがあって、それで呼ばれしのオーブに魔力の供給している。
流れるだいたいの量がつかめただけでもボクは満足した。
王都を出てから人が少ないところを目指した。
人間の街は正直見飽きたよ。なにもない、あるのは渦巻く欲望と底なしの貧困。魔王領じゃみんなが食べていけるのに、人間の街は飢えで死ぬ人がいっぱいいた。
もっともボクが関与することじゃないからどうでもいいけど、イザベラが無言でスラムというところをずっと眺めていたことが気になった。
どうしたと聞いても、ただ涙するだけで何も言わないのよね、変なペットだ。
人の住まいもまばらになりつつ、ボクらは帝国と王国の国境まで来ている。
なんでも戦争が幾度もくり広げられてるから、ここに住む人は少ないと小さな村で教えてもらった。お礼にためてる小麦粉とかの食糧を分けてあげたら喜んでくれたよ。
近くに暗黒の森林という場所があるらしい。魔物がいっぱい出るから行かない方がいいと言ってくれた。
暗黒の森林っていうから暗黒神となんか関係あるのかな? そう言えばセクメトはずっとボクの影にいる。
そろそろ出してあげたいので、明日からボクは暗黒の森林へ行くことにするさ。
お疲れさまでした。




