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説話68 元魔将軍はペットと旅に出る

「そうか。おぬしはここを出て行くというのだな」


「はい。もうすることがないのでね、ほかの所を回ってみようと思うんだ」


 別れの挨拶に行ったら、レイヤルドさんが冒険者ギルドの地下にある応接室へボクを連れてきた。



「ところでつかぬことを聞いてもいいか?

 いや、答えたくないならいいが、魔王軍を追放されたと言っておったな。それはどういうことだろうか」


「うん? 追放は追放だよ? 魔王軍に居られなくなったってことだよ」


「それは……失礼だが追手を差し向われるとかは……」


「あはは、ないよ。退職金はもらったし、それに魔王軍のお仕事はしなくてもいいのよね」


 なるほどね。


 レイヤルドさんが心配しているのはボクが魔王軍を追放されたこと。


 ここにボクがいることで人間の国々を巻き込んでしまうじゃないかと思ってたんだ。魔王軍はそんなせこいマネをしないよ、やるなら正々堂々と。それこそ、その場で決着を付けちゃうときだってあるんだから。



「そうか、失礼なことを聞いた。申し訳ない」


「いいよ」


 レイヤルドさんはボクがプレゼントした魔王領の山奥に棲む、モンスターのエーティが作ったお酒を美味しそうに飲んでる。



「ちなみにクラン・デオアの跡地からあいつらがため込んだ金銀財宝ほかに、純度が高い金の大きな立方体が見つかったのだ。

 そのことで侯爵様からおぬしにどうされるつもりかと聞いてくれの話だが」


「いらないよボク。好きにしたら?」


 あれは棺だよ? ボクはそんなものいらないね。



「そうか、ありがたい。

 あの金でこれまでクラン・デオアから被害を受けた人たちに賠償するとともに、迷宮都市の街並みを整備したいと侯爵様は考えておる。

 わしもそれがいいと考えておったが、いかんせんあれをやったのはおぬしだからな、ちゃんとうかがっておかないとな」


「ふーん、興味ないよ」


 ここでボクは立ち上がって、エミリアという冒険者ギルドの職員さんに遊んでもらってるイザベラに子犬や子猫たちを迎いに行こうと思ったんだ。


 みんなと合流したら迷宮都市を出て、色んなところへ行ってみよう。


 なんか楽しいことがあるといいなあ。



「アーウェ・スルト様!」


 あれれ? レイヤルドさんがボクを全名で呼んじゃってるけど、どうしたのかな。


 扉のところまできたボクは、振り向いてから彼のことを見た。


 丁寧に土下座するエルフのお爺さんは頭を床につけて、その両手は頭の前に綺麗に揃えている。



「我らエルフをもう帰れぬと思ってた祖先の森へ帰して頂けることに感謝する」


「礼はいいよ。元と言えばボクがうまく言えばよかったのに。

 苦労をかけたね、いつかはつぐないするからね」


「もったいなき言葉を。それならば、我らエルフの悲願である召喚勇者のことをアーウェ・スルト様にお任せしても宜しいのでしょうか」


「いいよ、勇者たちのことは任せてよ。

 あれはボクがやる、ボク()()やれないんだ」


 そう。たとえ魔王軍を離れていても、勇者たちを送り返せるのはボクしかいないんだ。


 魔王様はボクのものはボクが持ったままでいいと言ってくれた。だから送還のナイフは今でもボクが持っている。



 今度は騙し討ちじゃない、真正面から正々堂々と立ち向かってやるよ。


 魔王軍の肩書がなくても、ボクは暗黒神のところへ数々の魂を送り込んできた地獄の水先案内人なんだ。


 ――アーウェ・スルトの真の恐ろしさを思い知るがいい、勇者たちよ!



 もしボクがそういうことを言ったら、本当に喜びそうな召喚勇者もいるのよね、困ったもんだよ。


 戦闘狂ってのは、どうもどの世界でもいるのよねえ、まったくもう。でも本当にどうしようかな、召喚勇者のこと。



 といっても新たな勇者が召喚されるのは呼ばれしのオーブに必要な魔力が溜まるまで、最低でも三年はかかると思うのよね。


 今はそんなことよりもペットたちと旅することが大事なんだ。勇者たちのことはひとまず置いておこうっと。



お疲れさまでした。

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