説話61 冒険者ギルドの職員は噂を聞く
新入りのDランク冒険者イザベラ・ジ・エレガンスがいきなり従者の男の子と二人でダンジョン踏破して、とてつもなく大きいダンジョンコアを持ち帰り、冒険者ギルドの人々を驚かせた。
それからなぜか魂が揺さぶられてしまい、冒険者ギルドにいる人たちが粗相をしたという理解不能の臭い事件は起きた。
冒険者ギルドの職員たちが全員でお掃除して、やっとの思いで冒険者ギルドを綺麗にしてから酒場の営業を再開した。酒場へ冒険者が集まり出した頃、獣人の子供たちがクラン・デッドオアアライブの本部建物の地下にある牢獄に囚われてるという噂が冒険者ギルドに流れてきた。
冒険者ギルドの受付で勤めるベア族のエミリアは、お手伝いで酒場の酒を補給しようとしたとき、いつも担当する冒険者たちが獣人の子供たちが囚われた噂に聞き耳を立てた。
「アールバッツらも可哀そうよな。親がクラン・デッドオアアライブに騙されて殺されたってのに今度は狙われて捕まったってよ」
「マジでクラン・デッドオアアライブはロクなもんじゃねえよ、くそ。
ああやって迷宮都市に流れ着いた事情を知らん冒険者をだまして肉盾とか言って魔物を呼び寄せる役にしてよ、片っ端から潰していやがるぜ」
「なんでアールバッツらが捕まったんだ?」
「なんかよ、クラン・デッドオアアライブの所属冒険者が地下一階層でイザベラ・ジ・エレガンスの従者ともめてよ、全員がぶっ殺されたらしいぜ」
「スカッとする話じゃねえかそれ」
「ああ、俺達はな。
でもよ、クラン・デッドオアアライブってしつこいだろう? そんときイザベラ・ジ・エレガンスのポーターをアールバッツらが知ってたってどっかで聞きつけたらしいぜ。
アールバッツらはイザベラ・ジ・エレガンスから異空間のカバンをもらって、沢山の魔石をため込んだって聞いてよ、そんでアールバッツらがあいつらに狙われたんだ。復讐だとよ」
「かー、ガキを狙ってなにが復讐だ。格好つけて魔石をねらっただけじゃねえか。
あいつらはマジもんのクズだよな」
「ああ。イザベラ・ジ・エレガンスは強いからあいつらも手が出せないだろう?
たぶんまた闇討ちとか考えてるから、逃がすつもりはないだろうがアールバッツらはほら、ガキなんだろう? だから真っ先に狙われたんだよ」
「クソたれだよ畜生」
エミリアは別にアールバッツたちと仲が良かったわけじゃない。
ただ同じ獣人の同胞として、親をクラン・デッドオアアライブに殺されたようなもので、それからアールバッツたちに何かと目をかけてる。だから、この話を聞いたエミリアは心が痛かった。
「ねえ、今の話は詳しく聞かせてくれるかな?」
その子供の声に、ここにいる全員は魂が底冷えして動くことができなかった。
エミリアは視線だけを声のしたところに向けると。そこには笑みこそ顔に浮かべているが、まったく笑ってるようには見えない美しい顔した少年が立っていた。
お疲れさまでした。




