説話53 元魔将軍は約束する
「ま、待てくれ……スルト、いや、アーウェ・スルト。
頼むから魔力で押さないでくれ……」
しまった。レイヤルドさんがいることを忘れちゃったよ。てへ
「ふぅ……これでわかったろう? ルメクール。なぜ先祖が逃げ出したわけが。
スルトの話を信用するしないは別として、この化け物相手にわしらエルフがどうこうできる話じゃない」
ルメクールくんはビクビクと身体が震えているだけ。
そんなに魔力を出したつもりはないんだけどなあ。それにしてもレイヤルドさんはひどいや、ボクのことを化け物なんて言ってくれちゃって。
――褒めてくれてありがとうね。
「別にウソはいってないけどなあ。
というかウソを言う必要がないんだよね、やろうと思えばいつでもやれるからねボクは」
おっと、二人がボクの言葉にビクついているみたい。
脅しになっちゃったね。めんごめんご。これは聖女ショウコが教えてくれたんだ、なんでも死語らしいけど。死の語って、怖いね。呪詛なのかな? ボクにはそんなの効かないけどね。
「て、てめえの話が本当なら、おれたちはいつでも先祖の森に帰れるってのか?」
「帰れるよ? いきなり失踪したからボクもびっくりしちゃったから、エルフさんの住まいに保存の魔法をかけたんだ。
今でもそのままと思うよ?」
「てめえの言葉をどうやって信用しろってんだよ」
「あなたもたいがいしつこいね。
じゃ聞くけど、ウソつきの魔族って聞いたことあるの? ボクたち魔族はウソをつかないよ? そんな必要がまったくないからね。
ボクたちは殺ると言ったら必ず殺るのよねえ」
二人のエルフがボクを見ている、ボクに穴が開きしそうくらいに見ている。
うーん、ここはサービスしておっちゃらけの顔でもしたほうがいいかな? そうだ、聖女のフクナガは睨めっこの遊びをいつもしてくれたんだ。この人たちもそれがしたいんだね!
いや、それはないな。
フクナガを知ってるのはボクだけだし、あの人は僕以外のこの世界の人が大っ嫌いって言ってた。刺したときの信じられないって顔がボクには悲しかったんだ。
――フクナガあ、幸せになってねええ!
「……申し訳ない。どうやらわしらの先祖たちの勘違いだったようだ」
「すまねえ! 色々と失礼な態度を取った。悪い!」
おや? 二人が謝ってきたよ? いやだな、そうな態度を取られるとボクも悪かったって思えてきたじゃないか。
まあ、実際にあの時は説明不足だったんだろうね。
それならサービスしちゃうよ。
「ボクはねえ、魔王軍を追放されちゃったんだ。
でもね、伝手があるからきみたちが無事に帰れるように保証してあげるよ」
「むむ? 追放ってなんだ?」
「伝手? 保証?」
はい、手に取るは魔道具のケイタイ。連絡するのはこの人。
「もしもし、オレオレ」
『む、オレオレサギは間に合っている。ケイサツ呼ぶからそこで待っていろ。』
あはははは。ガルスも人がいいねえ、ちゃんと乗ってくれるもんね。
お疲れさまでした。




