説話52 元魔将軍はエルフの謎を解く
黄金色に輝く冒険者カードにはエルフの魔力が込められていた。
この魔力はボクの居場所を知るために紡ぎだされているもので、別にボクは逃げも隠れもしないからどうでもいいのだけどね。
「SSSランクの冒険者って、ボクはなにをしたらいいのかな?」
「今回のようにダンジョン踏破とか、到底達成されいない依頼を解決してほしいことがメインになる」
「それだけじゃないよね」
「そうだ、それなら複数のSランクの冒険者で解決できる。
我らエルフはおぬしが魔将軍アーウェ・スルトであることを見込んで、たとえおぬしが我らエルフの宿敵てあっても、転移勇者が世界に刃を向いた時にその討伐を願いたい!」
「ちょっと待てね。
転移勇者のことはわかったとしてボクがいつ、きみたちの宿敵となったんだ?」
「とぼけるな、アーウェ・スルトっ!
おれたちの先祖を今の魔王領から追い出したくせに、よくもまあいけしゃあしゃあと抜かしてくれるわ!」
ボクの質問に反応したのはエルフの若い男、この人はいったいなにを言ってるのが全然わからない。
エルフを魔王領から追い出しただなんて、そんなことは一度もしたことはないなんだけどなあ。
「ごめん、なにを言ってるか全然わからない。
ボクがいつエルフを追い出したか、それを教えてくれないかな?」
「んだとてめえ……」
「よさんか、ルメクール!」
「しかしこいつは……」
「黙れと言っている。これ以上口を出すと追い返すぞ」
「くっ……」
エルフのお爺さんはエルフの若い男を黙らせたが、今でもその人は憎々しげにボクを睨んでいる。
それはいいけどさあ、ボクとしてもこのままでは納得できないよ。
「ギルド長、えっと……」
「わしはクワル・レイヤルド、レイヤルドと呼んでくれたらいい」
「じゃあ、レイヤルドさん。先の話を詳しく聞かせてくれないかなあ、身に覚えのない恨みは歯痒くてね。
復讐されるのは別に構わないが理由は知りたいなあ」
レイヤルドさんとエルフの若い男は互いの顔を見合わせてから、レイヤルドさんが口を開いた。
「いにしえにまだ魔王領がない時代、わしらの先祖は今の魔王領の森々に住んでおった。
それが魔王は魔王領の征服に乗り出して、先祖たちが軍を成して抵抗しようとした所、おぬしによって追い払われた。
あまりに強大な力に恐れをなした先祖たちは魔王領から逃げ出すことに決めたのだ。
おぬし、身に覚えはあらぬか?」
うーん……エルフが逃げたあ? ええ? そんなことがあったっけ……
――ってあったね。あー、それね。それなのね。
「あのね、いま思い出したけど。誤解だよねそれ」
「誤解だとお? てめ……」
「黙れいルメクール!
……誤解というのなら教えて下さらんか。スルト」
なんだか真剣な目をして聞いてきているレイヤルドさん。
いいよ、教えるよ。実はボクもエルフさんたちがどこへ行ったんだろうと思ったのよね。
まさか逃げ出していただなんて、ボク、脅していなかったはずだよ?
「あのね、ボクらは魔王と現在の魔王領を切り開いたなのね。
そこで色んな魔族は従ってくれたけど、エルフさんたちはどうしようかという話になって、できれば傘下に加わってほしかったんだ」
「そんなこ……」
「黙れいルメクール! スルトも気にせずに続きを」
「そう? 魔王軍に入ったからって、別にすることはなにもない。籍さえおいてくれれば、ほかの魔族からは攻められないよね。
そういうことをされるとボクらも黙ってないから。要するにそのまま生きる身分を持ってほしかったわけさ」
「……」
二人が黙っているのでボクは説明を続ける。
「それでね、いきなり軍勢組んできて魔王軍に立ち向かおうとしたから、ボクがみんなを抑えて飛び出したわけさ。
まあ、そりゃ魔法を使われそうだったから魔力でかき消したけど?」
「いまさらそんなことを言われても信用でき訳がねえんだよ!」
ルメクールというエルフの若い男が鋭い目で睨んできたからボクもムッとした。
ボクは出来るだけ誠意を尽くして説明しているのにその態度はないよね。
「だったらどうする? ボクとやり合う?
いいよ、手加減してあげるからさ」
そう言ってからボクは席を立った。ちょっとだけの魔力を込めて。
お疲れさまでした。




