説話44 元魔将軍はダンジョン中ボスに会う
「事情は把握した。周りの証言はあるし、お前ら咎はない。
だが気をつけろ、クラン・デッドオアアライブはしつこいから必ず復讐しに来るぞ」
「え? なにそれ、美味しいの?」
「恐れ知らずの小僧だな。肝っ玉が太いのか、ただの無知の小僧か……
とにかく警告はしてやった。死にたくないなら早くこの迷宮都市から出て行くことだな」
騒ぎを聞きつけた冒険者ギルドの係員さんたちがため息をついたけど、アールバッツたちをギルドへ連れて行く約束をしてくれたよ。
――優しいねっ! ボクはそういう人は嫌いじゃないよ。
ミールが大きく手を振ってくれて、ボクもそれと同じように大きく手を振りながらバイバイした。さて、ここはゴブリンしかいないから降りていこうか。
イザベラが戦う。オークであろうとオーガであろうとトンファーで一発。
まっ、当たり前と言えば当たり前だよね。なんせボクが強くなるように身体強化してあげたんだからね。
そうそう、ボクはゴミ拾いすることにした。ミールたちがこんなもので喜んでくれるなら、いくらでも取ってきてあげるよ。
地下階層30階でボスが出た。でもこれは囚われ魔物じゃなくて、ダンジョンモンスターのアークグリフォンさん。
ほんのちょっとだけ強いけどボクは興味ない。
「イザベラ、行って来てよ」
「はいな、ワタクシにお任せなさい!」
アークグリフォンさんが火炎魔法を放つが、それをイザベラのビキニアーマーが跳ね返す。
うん、アークグリフォンさん、それはびっくりするよね。
あ、飛んで逃げた。上からのブリザードブレスだ。ごめんね、ボクが創ったビキニアーマーの魔装防御にはそれが効かないんだよね。
イザベラもダンジョンの床を蹴って飛び上がる。
そのまま驚愕して動かないアークグリフォンさんを地面に叩き落とした。
最期の足掻きにアークグリフォンさんが振り払った前足の攻撃は勿論ビキニアーマーの魔装防御の前に何の意味も持たない。イザベラはそこでトドメとばかりにトンファーで乱れ撃ちする。
流れるような技にボクもうんうんと頷いて満足した。
よし、ペット強化飼育計画、着々行進中だね。いつかはエンシェントドラゴンは無理でも、アークドラゴンくらいと真っ向勝負してほしいのよね。
おっ? 結構大きい魔石だよこれ、きっとミールは喜んでくれるよ。
ミスリルのナイフも落としているけど、これはアールバッツにあげようか。ゴミだけど。
『そこいくものは何者だ!』
全身を黄色の竜鱗で纏うサンダードラゴン。
それは雷を操る竜族で魔王族の奥地、特に山脈地方で見かけることがあるドラゴンさんだ。
――この子はどんな罪を犯したのでしょうね、ちょっと聞いてみようかな。
「ボク、スルトだよ」
「ど、ドラゴン……あーーれーー……キュー……パタンッ」
おやおや? イザベラはドラゴンさんを見て失神しちゃったよ、ダメじゃないか。
これじゃペット強化飼育計画は方針変更だね。まずはもっと色んな魔物と戦ってもらって、モンスター慣れしてもらわないと。
『人間、ここまできたのは褒めてやるが、おれも山に帰るまで死ぬわけにはいかんのでな、悪いがここで死んでもらう』
あ、サンダードラゴンさんが乱れ落雷を放とうとしているよ? ボクは大丈夫だけどイザベラがなあ。
――魔装防御は雷系の攻撃を想定していなかったのよね、あとでちゃんと改良しなくちゃ。
イザベラがビリビリして起きるかもしれないから、ボクがちゃっちゃとやっちゃおうか。
『落っちろ!』
サンダードラゴンさんがボクの魔力を込めた声でダンジョンの床に落ちてきた。
お疲れさまでした。




