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説話42 元悪役令嬢は無双する

 ボクとイザベラの冒険者カードを係員さんに見せたら、すんなりと通してもらえたよ、よかったあ。


 係員さんはこれでもかとジロジロとイザベラを身体の隅々まで見まわしたけど、この係員さんもさきのエルフのお爺さんと同じのように強い者を見分けられるのかな?


 人間はそういう力を持たないと思うけど。まっいいか。



「まずは様子見でイザベラが一人でやってね? ボクは手を出さないからさあ」


「ワタクシにお任せなさいな。オホホホ」


「はーい」


 うん、イザベラが頑張る。


 トンファーでゴブリンを殴って消し、イザベラの足で蹴られて消されるゴブリン。イザベラに格闘技を教えてよかったよ、これも戦士のトモナガのおかげだね。


 あいつは知識だけは豊富だが自分では全然できないって言ってたけどね。



 ゴブリンたち(ダンジョンモンスター)が落としていく素材は鉄のナイフや棍棒に小さな魔石。それにごく稀ににポーションが落ちるだけで、ハッキリ言ってゴミだから拾う価値はないね。


 だからボクとイザベラはそれらを取ることもなく前に進んでいく。




 気が付けば汚い服を着た五人の子供が後ろに付いて来て、イザベラが倒したゴブリンの落とすものを拾いあげる。ボクと視線を合わすと一番まえにいる子供の後ろにほかの四人がサッと隠れた。


 頭のところに耳がついてたからあれは獣人だね。



「やあ、きみたち。どうしたのかな?」


「あ、あのう……これを拾いますから、清算したあとで一割をもらえませんか?」


「うん? 一割? いらないよ」


「……グスン……じゃあ、全部お返しします……」


 うーん。子供たちが泣きながらゴミをくれようとしているよ。


 どうしようか? いらないよそんなゴミ。



「ほしいなら全部きみたちにあげるよ、もらってね」


「本当ですかっ!」


 パッと明るくなった子供たちが大喜びしている。なんでだろうね、ゴミをもらって嬉しいなんておかしいこともあるよねえ。


 おや? 一番小さな女の子が鉄のナイフを抱えてるじゃないか、危ないよ? 手を切ったらどうするのさ。



「うえーん……」


「これをあげるからこのようにこの中に入れてね」


 鉄のナイフを取り上げられたので女の子は泣き出したが、ウェリアルがくれた異空間のカバンにそのすべてを放り込んだ。


 そういえば中にイザベラと会うまでの間に、摘んだ薬草とか毒消し草とか、魔眼で見通した食べられそうな果物とかを入れてある。


 ――それで金作りしようと思ってたが……まあいっか、このままあげちゃえ。



「これはきみにあげるよ」


「……すん……ありがとう、お兄ちゃん!」


 泣き顔から一転して笑う女の子にボクはこれまでにない新鮮な気分に包まれた。


 そういえばボクはこのなりでよく子供に間違えられる。


 それはそれで勇者を刺すとかに役に立ててきたが、ボクにも感情はある。これがユミの言ってた胸がキュンキュウンするってことかな? 思わずその女の子の頭を撫でてしまった。


 にっこりと笑ってくる女の子、なにこれ? なにこの可愛い生き物。頭に耳が付いているけどこれがケモミミ?


 フ、フフフフ.……ファハハハハっ! マスハラあ! モフモフを見つけたよボク。君の言ってた通りこれは可愛いよ



 ぐぅ……


 おや? モフモフっ子のお腹から音が鳴り出したぞ? これはイザベラのお腹からもよく聞くもので、要するにお腹が減った合図だ。よーし、ご飯にするかな?



「おーい、イザベラあ」


「ホッ、ハッ……なんですの? スルトちゃん」


「ご飯にしようか?」


「ハヤああーっ!」


 おお、素晴らしい。


 10体はあるゴブリンを横蹴りだけでかき消したよ。今までで一番の技だね。



お疲れさまでした。

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