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説話39 元魔将軍は依頼を受ける

 お爺さんはしばらくの間スルトを見ていたが、込められてる肩の力を抜いて、スルトに手を差し出す。


 お爺さんから握手を求めたスルトは、少しだけ考えてから笑顔でその握手に応じた。



「小僧、わしはここの冒険者ギルドでギルド長をしておるレイヤルドというエルフだ。

 おぬしの名を教えてくれぬか」


 問いの代わりにスルトは冒険者カードをレイヤルドというエルフに見せた。



「むむ、パペッポ村出張所所属、ウェリアルというやつが所長か……

 ふーむ、ウェリアル……おお、確かに泣き虫のガキがいたな。

 思い出した、魔法の才能はまるっきりないが懸命な小僧だった。あいつは元気しておったか」


「元気だよ」


「そうか、そいつは良かった。

 ――してスルト、お前はここのギルドに所属する気はないか?」


「ないよ」


 間髪を容れずの即答にレイヤルドは少し肩を落としたが、気を取り直してスルトとの会話を続ける。



「さきは依頼を見ておったな。

 おぬしはサンダードラゴンの依頼を引き受ける気はないか」


「Sランク限定って書いてあるけどね、ボクは駆け出しのDランクの冒険者だよ?」


「ふっ、人間ならSランクでないと倒す可能性を持たぬ。人間ならな」


「そうだね、それは思うね。

 サンダードラゴンの乱れ落雷(サンダーストーム)は面倒だからねえ」


 スルトの言下にレイヤルドは彼がサンダードラゴンを知っていることを暗示し、引き受ける意味をスルトが求めていることも同時に理解した。



「ここの領主様の侯爵様にそれはとても可愛がっておる子息がおってな。

 それが不明な病にかかって、色々とわしらも助力して手を尽くしたがどうにもならぬ。

 そこで考えたのがドラゴンの肝、いにしえより万病に効くという言い伝えがあるからな」


「ふーん」


 スルトはドラゴンの肝が病に効くという話を聞いたことがない。



 たぶんドラゴンを恐れた人間が作り出した根拠のない言い伝えと一人で納得した。ただここにいてもすることがないスルトは、暇つぶしにこの依頼を引き受けようと遊び心を起こす。


 ここの領主である侯爵の子供の病気だが、それはスルトが魔眼で看破すればいい。


 形のあるものならスルトに見破れないものはないから。



「いいよ、この依頼は引き受ける」


「そうか、かたじけぬ。侯爵様に代わってお礼を言う」



「――スルトちゃーん、説明は受けましたから行きますわよ!」


 イザベラの呼び声が聞こえたので、スルトはレイヤルドに右手を上げて挨拶を交わし、イザベラの呼びかけに応じてこの場から去った。




「……スルト……この名はどこかで見た覚えがあるな」


 レイヤルドは恐怖していた。


 人外どころか、とてつもなく大きな魔力の渦が冒険者ギルドに入ってきた時から、レイヤルドは注意深くそれを観察した。



 幸い、本当に存外の幸運に魔力の渦の持ち主は何もする気はなく、ただギルド内をうろうろしているだけ。


 そいつが連れてきたプルプル乳とブクブクの腹回りをした人間の女も、これまで見たことのない露出度の高い鎧と、人間にしては桁外れの実力が備わってる。しかもその女が冒険者登録をするのは初めてだという。



 ――こいつらは何者だ? なんの目的でここに来た?



 レイヤルドはそいつらが冒険者ギルドを出ると、使われることがない古い倉庫に偽装した緊急連絡室へ行くため、急ぎ足で冒険者ギルドの地下へ向かった。



お疲れさまでした。

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