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説話27 悪役令嬢は追い詰められる

「クズ、ノロマ、早くしなさいっ! こんなじゃ追いつかれるんじゃないですの、もっと急ぎなさいっ! バカっ!」


 今、ワタクシは追いかけられていますわ。


 お父様のメリカルス伯爵は、勇者が魔王に倒されるまで何日かかるかという、つまらない賭けで負けたせいで一族断絶の国命を受けてしまっていますのよ。おかげで好きだったドレスやアクセサリーも、ロクになにも持ち出せないまま逃げるはめになってしまったのですわ。



 お母様や兄上様は別のルートで逃亡することで、お父様はワタクシを汚らわしい馬丁に預けて、ワルシアス帝国のほうへ逃がそうとしてくれましたのね。あそこには姉上様が嫁がれているから、それで生きながらえようといくらかの金貨を袋ごと渡されて、連日馬丁と二人で逃げ回っていましたの。



 ワタクシには王国の第五王子だけど、ブッタクサ様という一応王子様の婚約者もいましたのよ? お父様や兄上様に教えられた通りに、周りの競争者であるご令嬢をあらぬ噂を流しては蹴り落とし、顔だけは良さそうな平民の男を嗾け、色恋の罠に嵌めて、時には下賤な男を使って犯させるという手も使いましたわ。


 貞操を失ったご令嬢なんて、王子にはお似合いじゃないですものね。



 それがどういうことですの? ワタクシの一族が罪人になったことを知ったとたん、こんなことを吐き捨ててきましたわ。



「お、お前みたいな大罪人はな、こ、婚約を破棄してやる! わ、私のような格好いい王子様と婚約するために、い、色んな汚い手を使ったのはこっちも知ってたぞ。こ、婚約は破棄したからな、と、とっとと私の前から消え失せろ! は、はよう行かんか!」


 あの小デブのクソ王子は手のひらを反すように、ワタクシに婚約破棄を言いつけて、しかも追手に当たるメリカルス伯爵の後を継ぐ、ライバーン伯爵家に通報しましたのよ。あの小デブのクソ王子野郎、絶対にただじゃおかないですわ。



 それよりも追手のライバーン伯爵家ってなんなのです? ワタクシは絶対に認めませんわよ。あそこに次男坊、いつもワタクシの胸をジロジロといやらしい目で見てきて、汚らわしいったらありゃしませんわ。あいつの家族は子爵どころか、貴族と名乗るのもおぞましい。


 それがライバーン伯爵家ですって? ワタクシは絶対に認めませんわ!




「お嬢様、着きましたよ」


 ここは深い森の中、このバカ馬丁はワタクシの命令もなしになに止まっていますのよ。それよりも早くワルシアス帝国に行かないと、ワタクシが追手に捕まっちゃうじゃないですの。



「こんなところでなんで止めますの、さっさと前へ進みますわよ、バカ者っ!」


「バカはてめえだよイザベラ。久しぶりだなおい、随分とまあ、やつれてるじゃねえか。胸は大きいままだけどな、ケケケケ」


 この声、忘れもしませんわ。ライバーン子爵ところの次男坊ですよ。なんでこんな所にあいつがいますのよ。



「お坊ちゃん、約束通りに連れて来やしたぜ。へへへ」


 薄汚い馬丁が裏切りましたのね! あいつぅ、ずっと伯爵家で雇ってやったのに恩を忘れて許さないですわ!



「あなた、裏切りましたのね!」


「どうとでも言いやがれ、このアホボケの狂ったお嬢。てめえのことがずっと気に食わなかったんだよ、人のことを気に入らないって蹴りまくりやがって。さっさと死んでしまえや、ペッ!」


 汚い馬丁の唾がワタクシの高貴な顔にかかってしまいましたわ。ヒー、(きたな)らしいですわ、早くお顔を洗わなくちゃ。



「おい、いい加減にしろ。こいつは俺の女になるんだぞ、汚すなよ」


「すんません、お坊ちゃん」



 馬丁が卑屈そうにライバーン子爵ところの次男坊に謝っていますわ。それよりだれがあんたなんかの女になるというですのよ、バカバカしいですわね。



お疲れさまでした。

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