説話25 元魔将軍はオーガを狩る
うん、ウェリアルさんは気を失った。好都合だね。
さてと、久しぶりに格下のやつらと遊んでやろうかな? ボクって、優しいー、ヒューヒュー。
これは戦士のカマモトに教えてもらった口癖だね。
「初めまして、そしてこんにちは。ボクの言葉がわかるんでしょう?」
オーガは戸惑っていた。死にかけた遊び相手の左足を食おうとした仲間がいきなり両手と両足を切断されて、聞くに堪えない悲鳴を上げている。
なにが起きたんだ。
そして、目の前で人間の子供がわけのわからない魔法を使って、遊び相手の手と足を再生させた。
こいつはなにもんだ。
驚いたことにその子供は魔族の言葉を使ってる。こんなことはあり得ない。そんなことができるのは同じ魔王領側の魔族だけ、昔に魔王軍に入らないかと誘われたことがあったからよく覚えてる。
でも魔王軍に入ると人間は殺せない、食べられない、だから拒否した。そして魔王軍の幹部に警告された。
人間を襲うなと。
そんなことは従わない。俺たちはオーガ、人間より強い。だから襲っていいはず、食っていいはずだ。弱い者は強い者に従うのが自然の摂理、おれたちが正しんだ。
「てめえ、なにもんだ! なんで俺たちの言葉を知っている?」
オーガの中で一番屈強なオーガがスルトへ吠え掛かった。
スルトは特に気にすることもなく、両手と両足が切り落とされたオーガに極大回復の魔法をかけた。手足が再生されたオーガはなにが起きたかわからず、ただ自分の手足を見つめるだけ。
「そうだね、自分を殺したものを知っておくのもいいかもね。わかった、名前は教える。暗黒神のところへ行ったら、こいつが俺たちを殺しましたってちゃんと伝えるんだよ?」
スルトの子供が持つ無邪気な雰囲気がこの場では異様過ぎてオーガたちは動かない。いや、動けないオーガの前で両手をバタつかせながら道化みたいな笑いを見せて、スルトが自分の名を名乗り上げる。
「元魔王軍序列三位の魔将軍、通り名は地獄の水先案内人、ボクはアーウェ・スルトだよ。死ぬまでの間に楽しく遊んであげるね、野良オーガさんたち」
「!」
オーガたちは一斉に逃げようとした。だが周りを見えない壁で囲まれて、オーガたちはこの子供、元魔将軍から逃げられないとすぐに悟った。
オーガたちは死にかけた。それは自分の内臓を見たり、細かく切り刻まれたりした。それでも死ぬことを目の前の子供が許してくれない。死にかけ寸前に極大回復の魔法で全回復させられて、そしてまた死にかけていく。
懇願しても、死を願っても、その子供は取り合ってくれない。大笑いされながらオーガたちはまた死にかけていく。ただそれだけの繰り返し。
「なんかこういうのも飽きちゃったな。ねえ、死にたい?」
「死なせてくれ、お願いだ」
止まることなく涙を流し、オーガたちは抵抗もせずにスルトの足にしがみつく。切実に死を願われたので、スルトはオーガたちの願いを聞き入れることにした。
「わかった。じゃあ、バイバイだね、オーガさん」
心臓を魔力でつくった剣で一突きされて、オーガたちは今度こそ本当に望んでいた死を迎えることができた。
お疲れさまでした。




