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外伝その一 帰還勇者たちは日々を生きる

「いらっしゃい、よく来てくれたわね。

 みんなも待ってるから行こう」


 わたしたちを迎いに来たのは豪快な体格のいいお姉さん。


 なんでも実家の土建屋で働いていて、日焼けしたお肌は健康そうに見える。彼女の名は笹口敦子、異世界では私と同じ聖女をしてたという。


 でもね、敦子さんには悪いけど、戦士にしか見えないの。




 わたしたちは高校を卒業して、夕実と金山君は地方の国立大学に通ってる。


 夕実がね、頑張ったのよ? ああ見えても金山君って、お勉強ができてるのよ。だからね、夕実は高校の最後の一年、塾とかに通って、すっごくお勉強したのね。


 これと決めたことは努力する子だからわたしも見習わないと。



 わたしは翔君と同じ都市だけど違う大学に行ってるわ。翔君というのは沼田翔太の愛称ね。


 翔君は坂崎先生がコネを使って、推薦で体育大学に入学した。もちろんそこは坂崎先生の母校で、翔君は今も剣道に打ち込んでる。


 将来は警察になりたいって本人は燃えてるけど、その熱血さからして、どうしても刑事さんのイメージしかが湧かないわ。



 わたしはね、社会学部を選んだの。


 異世界に行ったからじゃないけど、あの酷い世界を見たから、人々の暮らしに興味を持っているのね。


 いつかは人々と関わるお仕事ができたらいいなあって思ってるけど、今は新しい生活に慣れるのに精いっぱいね。



 最初の夏休みはどうしようかなあ、翔君と二人で旅行に行きたいなあ、でもあいつはきっと合宿漬けになるんだろうなあ、寂しいなあ……



 そういうことばかり悩んでいたら金山君から連絡がきたんだ。



「勇者の集いを見つけた! 至急連絡くれ」



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「おい夕実、やめろって。いちいち引っ付くなよ、暑苦しい」


「おーおー、照れてやんのこいつ」


 住み慣れた街を離れる前にわたしたちは高校の先生にお願いして、誰もいないあの転移した教室でささやかなお別れ会をしたの。


 あれからそんなに時間は立っていないのに、みんなが変わっていくのね。


 夕実はとても綺麗になった。金山君もヘアスタイルを変えて、今は黒髪なの。


 なんだか似合わないね。



 夕実と金山君が同棲してるの。


 熱々なのは変わらないがどこかよそよそしさがあった高校時代と違って、今は本当の夫婦みたい。



 街に帰って来たけど久しぶりって感じがすごくしたの。


 学校へ通っていたあの道は今も変わらないのに、変わったのはわたしなのかな。お母さんが作る料理はいつものように美味しい、その味は懐かしい高校の時を思い出させてくれた。



「それでな、暇だからなんとなくスルト、転移、カラオス王国で検索してみたらな、勇者よ集えって古いホームページにたどり着いた。

 なんも大したことが書いてなくて、メアドだけはあったからメールしてみた。

 そしたらな、向こうから返信が来て、色々とメールで連絡したけど歴代の勇者たちが集う会があるんだってよ」


「金山! それは本当か!」


 ――もう、翔君はそこに食いつくのね。



「ああ、本当だ。メールの内容がもう異世界のことばかりだよ、マジで興奮したって俺。

 四人でしか知らないこと以外にも色々と書いてたよ。

 燃えたぜ、マジで」


「そうだもんね。

 あの夜はあたしにしがみ付いて燃えに燃えたもんね」


「あ、夕実てめえ、そういうことを言うんじゃねえよ!」


「なにお、お好きなくせに」


 二人は仲がいいわね。


 金山君も口だけは達者、本当は照れ屋だからね。



「それでそれで、歴代の勇者に会えるのか? 金山!」


 翔君もブレないわ。


 こんなんじゃ、一緒に旅行とか行ってくれるのかなあ。



「おう! そのために連絡したんだ、その日は用事を入れるなよ」


「もちろんだ! ぬおお、歴代の勇者に会えるんだぞ! 滾るぜい!」


 翔君、わたしに会うときもそのくらい喜んでよ。わたしに滾ってよ。



 でもわたしも実は歴代の勇者さんたちと会いたい。


 会って、色々と聞いてみたいんだ。


 あの異世界のこと、スルトが居た世界のことを。



お疲れさまでした。

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