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説話166 元同僚男は騎士団長を斬る

 ひしめく二ヵ国連合軍の約50万の雲霞がごとくの軍勢を見て、2万は届かない農民軍の兵士たちは身震いしていた。


 そんな農民軍にイザベラは勇気付けようと声を張り上げる。



「あなたたち! なにを恐れますの? イザベラ村には戦いに参加していない女子供たちがいますのよ、しっかりしなさい!

 これは負けていい戦ではなく、勝って当たり前の戦ですわ!」


 今日のイザベラはビキニアーマー改良バージョンの上に真っ赤な鎧を着させているんだ。


 別にそのままでもボクはいいと思ったけど、メリルとマーガレットがなぜかうるさくてね、仕方ないからペットに飾り用の赤い鎧を作ってあげたんだ。



 ――お? 二ヵ国連合軍の中から誰かが乗馬したまま出てきたよ、なんだかえらそうにしているやつだね。



「俺はカラオス王国第一騎士団のナスターガ騎士団長だ。

 反乱者どもに告ぐ、今からすぐにでも降伏しろ。そうすれば全員は情けのある斬首刑にしてやるぞ。

 さもなくば、もっとひどい死に方になるだろう」


 ボクはガルスに目配りした。


 こういうときはね、相手の気勢をそぐためにこういうやつをやっつけるのが一番なんだよね。


 ボクからの視線を受けたガルスが魔剣ルシェファールを携えたまま、静かにそのナスターガ騎士団長とやらのほうへ向かって歩いていく。



「なんだお前は。死に急ぐのか」


「われ、アガルシアス。汝、死闘を受けよ」


「なにをほざくか。このナスターガ騎士団長様がお前みたいな農民と一騎打ちするわけがないだろう」


「ふっ、臆病者」


「なあにいい……

 言わせておけばあ、死にたいならそこ死ねえっ!」


 ナスターガ騎士団長とやらが大きな剣を振り上げて、真っ直ぐガルスのほうへ馬で駆けていく。



「――斬っ!」


 ガルスが魔剣ルシェファールを抜き放ち、剣光一閃。



 ナスターガ騎士団長とやらは首を刎ね飛ばされて、首を失った体が血飛沫をあげながら、死体を乗せた馬がガルスの横を通り過ぎていく。


 二ヵ国連合軍最強の使い手と言われたカラオス王国第一騎士団のナスターガ騎士団長は、開戦間もなくしてこの場であっけなく命を散らせた。




 二ヵ国連合軍は信じられない光景にざわめき、最強の剣の使い手であるナスターガ騎士団長が農民ごときに一騎打ちでなすすべもなく敗れ去った。


 こんなことが起きていいはずがない。農民軍なんて鍬や鋤を持って、なんも戦闘技術がなく、ただ泣き喚いて突っ込んでくるだけの餌食でしかないはず。



 それがなんだ。


 打ち合うこともなく、たったの一撃でカラオス王国は最強の剣の使い手を失ってしまった。ワルシアス帝国も怨敵であるナスターガ騎士団長が死んだことを喜んでいいはずなのに、参戦した貴族たちや第三王子はその口を閉ざすことはできずにいる。



 簡単な戦いであるはずだった。逃げまどう農民を殺せばいいだけの戦いに暗い影が落とされてしまった。



「ええい! 歩兵ども前に進め! 農民を殺せ!」


 総大将である第五王子のブッタクサは歩兵部隊による攻撃を命じた。


 どうせいくら死んでもいい平民どもだ、敵が強かったとしても数で勝負したらいい。敵の主力が弱まったらその時が貴族連合と騎士団の出番だ。



 総大将の命令を受けた伝令が前線に命令を出す。


 歩兵部隊の主力である平民たちは心から嫌がっているが、前に行かないと後ろにいる騎士団たちに攻撃されそうで怖かった。


 彼らは進軍中に聞いていた噂は真実であってほしいと願っている。そうすると今すぐでも武器を捨てて、農民軍に降伏したいと心からそう願った。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 ――スルトは待っていた。



 たとえ勇者たちが農民軍を励まし、121人の子供が農民軍の前に壁のように守りの陣形に入ってもスルトは動かなかった。


 スルトはひたすら前進してくる歩兵部隊の動きを観察し続けていた。


 もう少しだ。もう少しで歩兵部隊は貴族連合と騎士団から分離される。


 そのタイミングをスルトは見極めている。



 ――開いた! 今だ!



 スルトは陣営から飛び出した。


 二ヵ国連合軍の貴族連合と騎士団から離れた歩兵部隊と、彼が育て上げた勇者たちの間の無人地帯に彼は立っている。



 スルトは天に向かって両手を高くかかげた。



お疲れさまでした。

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