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閑話8 魔王軍最高幹部は指揮する

『前方に人間の大軍があると思え。

 魔王軍は強い、だが人間はどんな手を使ってくるかはわからない。

 今回の演習は人間が魔王領に恐れも知らずに侵入したと想定し、演習の目的は人間の軍勢が持つ実力を推し量るものとする』


 南西方面軍最精鋭の面々が見ている中、ワテは声を張り上げた。


 ――もういいや、どうにもなっちゃえ。



『正面はアダマンタイトゴーレム。初撃は人間に撃たせてやれ、どのみち人間の武器や魔法ではアダマンタイトは突き破れない。

 全員はその攻撃を見て、その実力を見極めろ!

 アダマンタイトゴーレムの後ろでヒュードラがゴーレムの隙間から火を噴け、ヴァルキリーはその後方から弓攻撃で敵の突撃を食い止めろ』


 ワテはケンタウロスとギガンテスのほうに身体を向ける。



『左翼はケンタウロス、人間の初撃が終わったら時計回り方向に攻撃を加えつつ反撃に備えろ。

 右翼はギガンテス、動きはケンタウロスと同じだが反時計回り方向だ』


 次はドラゴンとセイレーンに指令を出す。



『ドラゴンは遊軍。上空で待機しつつ伏兵に備えて、最終段階で敵の後方に一気に舞い降りって退路を遮断しろ。

 セイレーンは後方で下がって来る怪我人を治せ。号令がかかったら全軍に勇気の魔音を歌い上げろ』


 最後は突進力に長けてるベヒーモスとトリッキーな動きができるアラクネに声をかける。



『ベヒーモスはセイレーンの護衛役及び最終の一撃、ベヒーモスが突撃時に正面部隊は道を開けろ。

 アラクネは予備で最後方で敵の伏兵を警戒して、万が一友軍が敗走した時は直ちに敵の進撃を食い止めて友軍を逃がせ』


 全ての役割を言いつけたワテは両手を広げてスケルトンに進撃の命令を下す。



『いいか! 怪我したらすぐにセイレーンの所でエクス・ポーションで治せ。

 命あることが一番、これはわが魔王軍の絶対命令だ。

 勝利後に逃げたいやつは逃がせ、降伏するやつは受け入れろ。

 魔王軍は伝統と慈悲のある軍団だ、むやみの殺戮はこれを禁ずる!』


 一息をついたワテは本日の一番の大声で叫ぶ。



『――さあ、演習開始だ! 魔王軍の恐ろしさを思い知らせてやれ!』


 ワテの言葉でここにいる軍団が一斉に動き出した。




 当たり前だけど骸骨の軍団は魔王軍南西方面軍に文字通り粉砕された。


 我に返ったワテはガクブル中。


 ――どうしよう? 調子に乗ってもうた、やってもうたがな。最精鋭にワテはなにをやらかしたんや。


 ワテ、今日が末路なん? 最高幹部は楽しかったなあ。毎日の清掃は気持ちよかったなあ。魔王城の点検維持もやり甲斐のある仕事だったしなあ。



 魔王城の子供たちよ、もうお菓子はあげられないけど泣かないでくれよ?

 

 ブッチャイクはこれからもずっときみたちのことを見守るよ。地獄の底でだけど……



 でもなあ、魔王軍最高幹部としての最期のお仕事は満足のいくものだった。


 アーウェ・スルト様が教えてくれた軍略を使うことができた。暇があるときにスケルトンたちを使っての練習が最精鋭を指揮することに役立ったんや。


 ワテの長い生涯、短い最高幹部の日々に悔いは無ーし!




「ほれ、なにを呆けているかえ。

 皆の衆がお前の声を待っているぞえ」


 魔王様の声がしたので、横へ顔を魔王様に振り向けると魔王様は本日一番の笑顔。



 魔王軍南西方面軍のみんなに視線を動かしていく。


 粛々と整列して、みんながワテのことを見ている。アーウェ・スルト様は言った。総大将としてこういうときはみんなを褒め称えるべきだと。だからワテはその言葉に従うことにした。



『諸君らの戦いは魔王様と共に見せてもらった、さすがは魔王軍南西方面軍の最精鋭である。

 本日は最強魔王軍の名に違わず、まことに見事な働きであった。

 魔王様も満足しておられるゆえ、諸君らは怪我を治してよく休んで、しかるのちに魔王軍序列一位、骸骨使いのブッチャクの名のもとに祝宴を持って諸君らを労うものとする。

 解散だっ!』



 湧き上がる魔族たちの歓声。


 ああ、宴会をすると言ったから用意するために配下たちを呼ばなくちゃね。



『出でよ、我がしもべたち!

 我に従えて、我とともに征かんぞ!』


 現れたのは食材と包丁や椅子にテーブルなど宴会用品を持つ、数千体はある我がしもべでのスケルトンたち。



 ――はれれ? おっかしいなあ? スケルトンの数、多くね?



 横を見ると魔王様は、それはそれはとても愉快そうな表情でワテに微笑んでくれてた。



お疲れさまでした。

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