説話149 元魔将軍はモフモフする
「はっはっは! いかがかな?
この最新式ジェットコースターは」
「もう最高ですわ。さすがはスルトちゃんが日頃からお褒めになってるノウタリンバカ自堕落天使のルシェファーレ様ですわ」
「それは恐縮しちゃうな。
スルト君から褒められるなんてめったにないことだよ!
はっはっはー」
「そうですわよ。スルトちゃんって、ワタクシのことが大好きですわよ?
夜になったらハリセンという愛の道具で優しく頭を撫でてくれますわよ」
「それはそれは。羨ましい限りですな。
はっはっはー」
「オホホホ」
はああ……二人の会話は聞いてたらさ、痛くもないのに激しく頭痛がしてくるボクってなんなのさ。
延々と続く会話は終わりそうにないのでこの二人が放置処分だね。
ボクは遊び疲れで寝ているミールの頭を撫でているんだ。ミールもさあ、成長してきて毛並みがすごく艶やかなのよねえ。この手触りは本当に気持ちいいね。
寝ているミールを抱きかかえてみた。
――うん! 温かいし、毛がフワフワだよ。
「……うん……すぅ……」
あ、ミールを起こしちゃ可哀そうだからまた寝かせてあげた。
――戦士のマスハラあ! モフモフって、最高だよお。
きみは触れなかったけど、ボクが代わりにいっぱいモフモフするから、それできみもモフモフはミッションコンプリートってやつだね。
休憩に戻ったフィーリとオリアナにミールを預けてから、ボクは用事のためにルシェファーレとダンジョンの最深層にきた。
「これを作ってほしいんだ」
ルシェファーレにみせるため、ボクは異空間から聖剣と賢者の杖を取り出した。
「こ、これはっ!」
「やっぱりわかるの?」
「これはいわゆる……剣と杖ですな!」
「まあ、剣と杖だけどね」
「……」
「……」
「お、オッホン……
スルトはこの剣と杖を壊してほしいというのだな?」
「そんなことは一言も言ってないからね」
ダジャレもいいけどさあ、こういう時は真面目にやってほしいのよね。
「では、この剣と杖をどうしてほしいと」
「ルシェファーレにそれぞれ10本を複製してほしい」
ボクは聖剣と賢者の杖をルシェファーレに手渡す。
勇者養育計画はアールバッツが成長してきたことで、そろそろ彼を勇者候補から勇者に育て上げようと決意した。
「こ、これはっ!」
「今度はなんだい?」
「オリハルコンで作っているんだぞ!」
「まあ、オリハルコンで作っているだね」
「……」
「……」
「もうっ! スルト君はつまんないよ! ノってくんなきゃ面白くないじゃん!
あーあ、やる気無くしたよ」
「じゃあ、やっちゃう?
ここでやっちゃっていいの?」
ボクは魔装を身にまとい、戦うために魔力を高めていく。
「あははは……いやだね、スルト君は。
いけずなんだから」
「これは大事なことなんだ、お笑いにされたくないね」
ルシェファーレは先と違って、真面目な顔をしたからボクも魔装を解いた。
「スルト君。これらには男神の野郎が神力を込めているから、悪いがこれと同じものは作れない」
それは知っている。
いくらルシェファーレが世界で最高の鍛冶職でも、神の力が込められている聖剣と賢者の杖は作れない。
「神力抜きのものなら作れそう?」
「それはできるよ。でもそんなもので魔王は倒せないぞ?」
「勇者を鍛えるのに使いたいんだ。
それに偽物とは言え、ルシェファーレが作れば限りなく本物に近いから見分けはつかないよ」
「了承した。それでいいなら作ってあげよう」
ちょっとね、人間の国々を混乱させちゃおうと思ってるんだ。
消えたはずの聖剣と賢者の杖が同時にカラオス王国とワルシアス帝国に現れたらどうなるのかな? あー、楽しみだ。
まっ、10本というのはせっかくなんだから多めに作っておいただけ。
人間の国々を混乱させるために偽聖剣はちゃんと使い道があるのさ。
お疲れさまでした。




