説話148 村長はおねだりする
子供たちの日常は午前が勇教園に通い、午後からはダンジョン遠征などの行事以外は自由時間にしてるのさ。
年長組は暗黒の森林で狩猟したり、村人のお手伝いして、それぞれの好きのようにさせてるんだ。
ミールとエリアスたちは村の子供たちとお友達になったみたい。
時々勇教園の体育館でケダマンしたり、かくれんぼで遊んだりしてた。村の子供たちもすっかり違う種族のレイミーとナルと仲良くしているようで、本当に子供の順応力は高いのよね。
アールバッツとフィーリは村が作ったイザベラ聖学園という、村人の子供たちが通う学園で村人から教師役を頼まれてる。
もっとマシな名前がないかなと思ったけど、ペットも喜んでイザベラ聖学園の園長になってるし、みんながハッピーってやつになるなら、ボクはなにも言わないよ。
それにしても近頃のアールバッツとフィーリは仲がいいのよね。
前に森で二人を見かけたときは手をつないでなんとお互いの顔をくっつけていた。ボクもドキドキしてさ、二人は交尾をやってくれないかなあと木の後ろに隠れてわくわくしながら覗いてたけど、いつの間にかマーガレットがボクの後ろで怖い顔して仁王立ちしてたよ。
ボクの首筋をガシっと掴んだマーガレットはそのままボクを寮のほうに連れて帰ったんだ。その道中はボクの体がずっとブラブラと宙に浮いてたけど、ボクは子猫じゃないのにマーガレットはひどいよ。
エリックは村のほうで新たに店を開き、今は村人相手に商売をしてる。
村人が使う農具や日用品、ポーション用の空のビンを買い付けに行く以外は、行商のほうはしていないみたい。
ベアトリスは自宅にる一階の店舗をセクメトからの建議で、カフェとかいうお茶を飲める店にしてるんだ。セクメトは昼間の内はそこでラノベを読んでいたり、ベアトリスとお話したりするのさ。
エリックたちがここで定住したわけは実に単純な理由。
ここに来てエリック夫婦に子供ができたんだ。エリックもユナもすごく喜んでいるし、ベアトリスは嬉しさのあまりに泣いていたね。
でもね、つれないなあってボクは寂しく思ったの。
交尾するなら前もって言ってほしかったよねえ。ボクはエリックたちに気を許しているのに、エリックたちもボクに気を許して、これから交尾するよって言ってくれれば、こっそりと覗きに行ったのにさあ。
そんなわけでボクたちの住まいもイザベラ村も毎日が騒々しい。
村の中に新しく建てた酒場でアリシアがプレゼントした森の酒をジャックが飲んでいるときに、今は幸せだとボクに感謝していた。
土地なんて元々ここにあるものだし、ボクはただしばらくの間しか援助していなかったのに、感謝されるなんておかしいよね。
まあ、本人がそれでいいなら、ボクからはなにも言わないけどさあ。
「そういうわけだからイザベラ村の子供たちと勇教園の子供たちがより一層の親交を深めるために、暗黒の森林にある森の遊園地へ遠足を連れて行ってくださいまし」
「え? どういうわけなのそれ。
いきなりすぎてよくわからないだけど」
ボクはねえ、イザベラが時々意味不明のことをいきなり言い出すことにもう慣れているんだ。
だからここはマーガレットにお茶を入れてもらおう。
「ワタクシのイザベラ村は足りないものがありますのよ」
「欲しいものがあればいつでも言っていいってボクはいつも言ってるじゃないか」
ボクはちゃんと言いつけているのに、ペットはボクの話を聞いていなかったのかな。
「スルトちゃんはおバカさんですのね。本当になにもわかっていませんわ。
だからみんなから鈍感の土管のアンポンタンって言われますのよ?」
「なるほどねえ……
ところでそのみんなって誰のことかな?」
――さあ、この地獄の水先案内人と本気で戦いたいのはどこのだれかな?
「ワタクシを含め、マーガレットにメリルさんでしょう?
あとはセクメトちゃんもなんか新刊ちょうだいって言ってましたわね」
「はーい、話を戻そうね」
毎晩のようにボクのベッドに侵入してくるやつらばかりじゃないか、戦う気を出して損したよ。
それとセクメトもラノベの新刊が欲しい時は直接ボクに言ってよね。
「子供たちは子供の時に楽しい思い出が必要と思いますわ」
「うん、そだね」
「だからね、ワタクシは思うですの。ジェットコースターにメリーゴーランドにお化け屋敷。
ワタクシは長らく遊園地へ遊びに行ってないのですわ。これってひどい仕打ちだと思いませんこと?」
「つまり、イザベラは自分が遊びに行きたいから子供も一緒にってことだね」
「先からそうスルトちゃんに言ってますのよ。
スルトちゃんはお耳をお掃除してませんから、かなりおかしくなってますわね」
「ボクはいま聞いたばかりなんだからね」
まあ、イザベラもこの頃はブルンブルンの腹回りが目立ってきたし、ボクもルシェファーレにお願いがあるんだ。
だからね、みんなで遊園地へ行こうか。
お疲れさまでした。




