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説話147 元魔将軍は村民に頼まれる

 静かでのどかな生活に新たな人間たちが加わったことで、子供たちの笑い声以外に人間たちの騒々しさでここが日に日に賑やかになっていく。



 新しく作られる村はボクたちの住居から少し離れた場所にあるんだ。


 マーガレットが持って行く食材で村の女たちは自分たちで食事を作ってるのさ。森の木を使うということでアリシアに来てもらったよ。



「ワタシが森の族長のアリシア。

 貴方たちが今度ここに住まう人間なの?」


 アラクネが現れたことで子供は泣くわ、男は逃げまどうわ、お年寄りは腰を抜かすわ、てんやわんやで大変だった。


 その中で女たちはびくびくしながら距離をおいて、アリシアに声をかけたんだ。



「あ、あのう……今度、ここに住むことになった人間です……

 よ、よろしくお願いします」


「よろしく。森に入ることは構わないが森を焼かないでね。

 木が必要な時は言ってくれたら、切り倒してもいい木を教えます」


「は、はい……そ、それでアラクネの糸は分けてもらえないでしょうか」


「いいですよ。あなたたちの作物と交換するわ」


 中年の女性たちは逞しいね、怖がりながらもアラクネと交渉してるよ。


 今後もこういうふうに魔族と人間が交流を続けてくれればいいと思うのよね。




 村人が住む家の工事は急速に進められてる。


 年長組は自発的に手伝いに行き、メリルから学問を学ぶことを聞いたジャックは汚れた服を着た五人の子供を連れてボクの所に来た。



「スルトさん。メリルさんからあんたたちは子供に学問を教えてることを聞いたのだが、良ければおれたちの村でも子供に学問を教えてくれないかな」


「そうだね。イザベラと相談してから返事するよ。

 それでいいかな」


「ああ、よろしく頼むよ。子供にはしっかりと勉強してほしいんだ。

 おれたちはもう畑仕事するしか能はないが、子供たちには商人とか学者とか、そういうもっと楽な仕事をしてほしい。

 もっともこういうご時世だから楽な仕事なんてないかもな」


「前向きに検討するよ」


「すまないな。

 それともう一つお願いしたいことなんだがな……」


「なんでしょう」


 ――うん? ジャックが言いづらそうにしてるけど、なんだろうね。



「この子たちのことだがな」


「はい?」


 ジャックが連れてきた五人の子供に顔を向ける。


 五人の子供はお互いに身体を寄せ合って、不安そうにボクのことを覗き込んでるのよね。



「実はな、この子たちは身寄りのない子なんだ。

 親がここ来る途中で盗賊に殺されてな、これまではおれたちが面倒を見ていたが今のおれたちも余裕がないんだ。

 メリルさんからあんたたちは孤児を養ってるって聞いてたから、何とかこの子らも一緒に面倒を見てやってくれないかな」


 五人の子供が不安がっているのはそのためだね。


 自分たちはどうなるかがわからないから、五人とも泣きそうになっているよ。



 でも、この子たちが自分の手で未来を掴めるかどうかを試してみたいね。


 チャンスってやつは一度きり。そういう運を掴み取れる子供はこの世界でも必ず生き残るんだ。



「ねえ、きみたち。ボクのところで住むつもりはあるの?」


 五人の子供は黙り込んだままだが、さあ、どうなるだろうね。


 一人の男の子が大きく息を吐いてから、ボクのほうに真っ直ぐな目で見ている。



「……ご飯食べれる?」


「ああ」


「寝るところある?」


「もちろん」


「とうさんとかあさんをやっつけたやつに復讐できる?」


「君が望めば」


「じゃあ、行く」


「ようこそ、勇者たち」


 ボクは五人の子供に笑顔を向けたんだ。


 ジャックはなにが起きたかがわからないようなきょとんとした顔をしてるけど、天命は自ら歩み寄るものさ。


 きっかけは復讐でもかまわない。理不尽な力を倒したいと思うことも人を動かす動機になれるんだ。




 これで勇者候補121人が全て揃った。


 あとは勇者候補たちを鍛えあげ、魔王様を倒す時機を作るだけ。


 ここから先はボクがすべき仕事だね。



お疲れさまでした。

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